ビジネスシーンでは、「モチベーションは高くて当たり前」「やる気がないなんて職業人失格」といった共通認識が見られることがあります。そうすると、やる気のない原因を自分自身の中に探し、「自分はダメなやつだ」と責め続ける悪循環から抜け出せなくなる場合も。
そこで、著書『モチベーションの問題地図〜「で、どう整える?」ため息だらけ、低空飛行のみんなのやる気』(技術評論社刊)において、行動科学にのっとったモチベーションの上げ方を提言している関屋裕希氏に話を聞きました。
自分やメンバーのモチベーションと上手に付き合うためにやってみてほしい5つのテクニックとは?
関屋裕希。東京大学大学院医学系研究科デジタルメンタルヘルス講座特任研究員。早稲田大学文学部心理学専攻卒業、筑波大学大学院人間総合科学研究科発達臨床心理学分野博士課程修了後、2012年より現所属にて勤務。専門は産業精神保健であり、ポジティブ心理学、組織心理学、認知行動療法等の知見を活用して、ワーク・エンゲイジメントを含む働く人のメンタルヘルス向上のため、研究活動と現場での実践活動を行っている。著書に『感情の問題地図〜「で、どう整える?」ストレスだらけ、モヤモヤばかりの仕事の心理』、『モチベーションの問題地図 〜「で、どう整える?」ため息だらけ、低空飛行のみんなのやる気』(技術評論社)がある(提供:関屋裕希氏)。――モチベーションとうまく付き合っていくために、まずはモチベーションとはいったいどういうものなのかを教えてください。
そもそもモチベーションは「ある」「なし」の2つではなく、(1)「やる気なし」→(2)「仕方なく働く」→(3)「大切だから働く」→(4)「楽しいから働く」、という4ステップがあります。
ステップ(1)から(2)に移行するには、心理学的には報酬や罰を使うアメとムチ的な方法がリーズナブルではあります。しかし、この方法は、もともと本人に内発的なモチベーションがあった場合、それを失わせてしまいます。自ら進んでやっていることにご褒美を与えると、次からはご褒美がなければやらなくなる。
そうではなく、内発的動機付けを維持しながらステップを進みやすくするためには、次の3つの欲求を満たしてあげるのがおすすめです。
1つ目が「自立性の欲求」で、自ら考え、計画し、行動したいという欲求です。人は主体的に働きたいと常々思っているので、上司が会議で意見を求めてくれる機会があるとか、自分の工夫で改良できる自由度があるとか、そういう部分があると意欲がアップします。
2つ目は、「有能さへの欲求」です。できることが増える、成長している実感があると、モチベーションが高まりやすくなります。社内の教育の機会を活用して新しいことを身に付ける、自分の仕事に対するフィードバックをもらうのもおすすめです。
3つ目は「関係性の欲求」です。私たちは、誰しもいい人間関係の中で仕事をしたいと思っています。具体的には、一緒に働く人を大切にしたり、尊重したり、困っている人がいたら声をかけたりして、自分からいい人間関係を作っていくことです。
これらができると、「やる気なし」からは脱却できるようになると思います。
――なるほど。(1)「やる気なし」から(2)「仕方なく働く」に至るために、まずは自分自身の欲求を満たし、働く上での気持ちの土壌を整えるのですね。
はい。次に、ステップ(2)「仕方なく働く」から(3)「大事だから働く」に進むには、目の前の仕事の意義と自分の興味が重なるところを見つけることが大事になってきます。
自分の仕事がエンドユーザーまでどうつながっているのかをイメージすると、たとえ単純作業だとしても、お客さんの喜びや幸せにつながっているという気付きを得られます。
自分が大事にしたいことを見つけるのは、そんなに簡単ではないかもしれませんが、普段何でも選ぶ機会があったら、なぜこっちがいいと思ったのか、なぜこっちをやりたいと思ったのか、その理由を内省してみるのがおすすめです。
最後に、ステップ(3)「大事だから働く」からステップ(4)「楽しいから働く」に移行するには、達成感や喜びを味わえる機会を持つことが大事です。そのためには、目の前の仕事を自ら形作っていくジョブ・クラフティングを活用できるといいと思います。このジョブ・クラフティングについては、次のテクニック2で詳しくお話しします。
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