AI導入で拡大するレイオフ 新卒だけでなく高給職も危ういワケ

» 2025年10月03日 15時41分 公開
[Carolyn CristHR Dive]
HR Dive

 企業がAIツールへの投資と導入を拡大する中で、より多くの雇用主が今後1年以内にAIで労働者を置き換える計画を立てている──そんな結果が、履歴書作成サービスを提供する米Resume.orgが9月に発表した報告書で明らかになった。すでに約3割の企業がAIで職を置き換えており、2026年末までに37%が職の代替を見込んでいる。

ai 提供:ゲッティイメージズ

新卒だけでなく高給職も危うい

 「今後18〜24カ月間で、AIの導入はここ数十年で最も劇的に労働市場を再編することになるだろう。定型的でプロセス中心の職務の代替が進む一方で、AI監督、データ倫理、プロンプトエンジニアリング、人間とAIの協働といったまったく新しい職種が生まれることになる」と、Resume.orgのキャリアアドバイジング責任者カーラ・デニソン氏は声明で述べた。

 米国のビジネスリーダー1000人を対象とした調査では、半数が採用を控え、39%が2025年に人員削減を実施したと回答。さらに35%が年内に追加のレイオフを予想し、58%が2026年のレイオフを見込んでいる。経済の不確実性、通商政策、そしてAIが人員削減の主な理由に挙げられた。

 特に高給職やAI関連スキルを欠く従業員が最もリスクが高いとリーダーたちは指摘している。また、新規採用者やエントリーレベルの従業員も解雇されやすい傾向がある。

 デニソン氏は「高給職は即時的な人件費削減を狙って標的にされやすく、AIスキルを持たない人材は自動化を優先する今の流れの中で特に脆弱だ」と述べた。「企業が求めているのは、コスト効率と機動性を重視するよりスリムでテクノロジー対応力のある労働力で、従来のキャリアパスや勤続年数よりも優先される。この状況は専門職に対し、AIや新興技術のスキルを再習得する必要性を突きつけている」と警鐘を鳴らした。

 一方で、テクニカルスキルだけでは十分ではなく、「適応力や批判的思考、感情的知性といったソフトスキルが将来の優秀な人材を差別化する」ともデニソン氏は強調した。雇用主は、デジタルスキルと人間的スキルの両面で従業員をアップスキルすることで、エンゲージメントと定着率を維持できるという。

 過去1年間で、大多数の人事責任者が「連続的なレイオフ」を実施。これは長期的な計画というよりも「場当たり的な人員管理」だと、キャリア開発を手掛ける米Careermindsの調査は報告している。その結果、残された従業員の士気低下や重要スキルの喪失が生じている。

 しかし、AIを理由に採用を減らした企業がある一方で、ニューヨーク連邦準備銀行の分析によると、大半の雇用主はむしろ従業員にAIの活用法を訓練する方向に傾いている。ごく一部の雇用主はAIによる近い将来のレイオフを予測しているが、アナリストはこうした変化が労働市場全体に大きな影響を与える可能性は低いと見ている。

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