特にGAFAMのような欧米のIT系の大企業では、業績が好調でありながらも、AIの進化により不要になった人員を整理する、“黒字レイオフ”が増えているという話をよく聞く。
しかし、ダイニーはまだ中小ベンチャーである。しかも海外VCから巨額の投資を受けて1年もしないうちに、なぜ社員の2割もの大規模なレイオフを行ったのか。実際、本当にAIで代替できると判断してレイオフしたのかは不明だ。
ダイニーの売り上げや導入店舗は急増しているものの、上場企業ではないため、詳細な業績を公表する義務はない。実態は赤字であり、海外VCに収益構造の改善を強く求められたために、レイオフに踏み切った可能性もある。
実際、40万円分の機材を無料で飲食店に配布したり、クレジットカードの決済手数料を安くしたりと、ダイニーが売りにしてきたサービスを競合他社も採用して競争が激化している。
ダイニーの顧客である、中小の居酒屋やラーメン店、焼肉店などの倒産が過去最悪のレベルで増えており、業績が悪い事業者が多いため、モバイルオーダーへの投資意欲が減退している可能性もある。
マーケットが縮小して、競争激化した中で、急成長を続けるのは非常に難しい。
また、LINEで企業の友達が増えすぎていることを嫌う人も増えていると聞く。ダイニーのモバイルオーダーに友達登録を求める手法には、限界があるという指摘があるのも事実だ。
ITはもちろん、AIの進歩も急速に進んでおり、ダイニーは来年も同規模かそれ以上のレイオフをしなければならない可能性がある。果たして、ダイニーの場外ホームラン級の成長は可能なのか。今後も目が離せない。
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
ダイニーの「退職勧奨」は法的にどうなのか? 弁護士に聞いた
「四十八漁場」リピーターが4倍に “友だち”が増えるモバイルオーダーは飲食店を変えたCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング