浅川木工では随所にAIを活用している。会議の議事録は手書きではなく、録音データを活用し、AIがまとめている。AIは発言者を認識し、「誰が発言したか」も文書に記載する。
商品のデザインでもAIを活用している。
「商品の設計ではChatGPTなどのAIを活用しています。既存製品の画像を読み込ませた上で『この部分の色を赤色に変えて』『取っ手のデザインを丸くして』など、言語で指示するとAIはすぐにデザイン画像を生成してくれます。以前は、絵コンテや試作品の作成を経て商品化の判断をしていたので、デザインの時間を大幅に短縮できました」
既存製品の画像とInstagramでバズった家具の画像を読み込ませ、AIにデザインさせる事例もある。以前は茶色系のシンプルな色合いが中心だったが、流行を取り入れることで、1ページ目の写真のような赤と黒の色合いが実現した。新たに設立した会社のロゴもAIがデザインした。AIはデザイナーの業務を代替し、時間短縮にも貢献している。
生産現場では近々、QRコード方式を導入する計画だ。工場の各工程でQRコードを読み取り、その情報をシステムに反映することで、事務所から生産状況を把握できるようになる。
同社を取り巻く市場環境は芳しくない。家具市場の規模は1990年前後がピークで、家庭向けは近年、6000億円台で横ばいに推移しており、食料品価格の高騰や人口減少の影響も受けていることから爆発的な成長は難しい。
「先細りが見えているので、国内の卸売以外も開拓しなければなりません。まずは利益率の大きい直販を広げるため、ECを立ち上げました。海外展開も見据えており、中東や北欧を視野に入れています。私の次の代になるかもしれませんが、海外売上比率をマックスで2割まで伸ばしたいですね」
直近では9月、米ファンドのLキャタルトンが大川市の大手家具卸である関家具を買収すると報じられた。Lキャタルトンは仏高級ブランド大手モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH)系の投資ファンドだ。これを起点に大川家具ブランドの世界的な認知度が高まるかもしれない。
IT化やDXと聞くと、目新しい技術を導入するような印象を受けるが、浅川木工ではWi-Fiの導入から始めるなど、基本中の基本からスタートした。前述の通り、システムの導入は利益率の改善にも貢献している。中小企業によるDXの参考になりそうな事例の一つといえる。
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
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