高市氏の言葉の裏に、どのような感情があるのかは定かではありません。数値目標を掲げたところで、「男性優位の社会構造は変わらない」というある種の諦念の表れかもしれないし、「女であることを言い訳にすべきではない」という女性側の問題と考えていたからかもしれません。
しかし、「数」の力は大きい。想像以上に大きい。人は置かれた環境次第で、意識も言動も変わります。その真理を、5年にわたるエスノグラフィー調査で明かした組織心理学者のR.M.カンターが主張したのが、トークン(珍しい存在)としての女性が及ばす影響です。
○=女性、●=男性 とし、視覚化して見てみましょう。
○○●●○●○●○ だと「○」は目立たないけど、
●●●●○●●●● だと目立ちます。
このように目に見える情報、すなわち○=女性が「目立つこと」は、単なる視覚的な現象だけではなく、組織の構成員一人一人の心理や認識を変化させる影響力をもっていたのです。これは「0より1の功罪」と呼ばれています。
女性がゼロで男性だけの集団と、1人でも女性がいる集団を比べると(トークンの占める割合が10%未満も同様)、後者の方が「女性が聞くにたえない話題を話す」頻度が増える傾向が認められました。
例えば、女性の前で「あのときのラウンドは……」とゴルフの話題を多くするようになったり、女性がいるにもかかわらず「だから女は……」と陰口をたたくようになったりと、集団の多数派(男性)は、自己の立場を維持しようと同質性を強調したのです。
やがて紅一点の女性は、排除されるか、同化するか。はたまた、屈辱的な扱いをされることに耐えるかという究極の選択を、結託した男性たちに迫られました。男性たちは女性が入ったことで、自分たちが“男性”という同質な集団だったことに気付き、その一枚岩を「壊したくない」「壊されたくない」という意識が無意識に働いた結果だと考えられています。
少々古い話になりますが、小泉内閣のときに田中眞紀子氏が「自由にやれというから動こうとしたら、誰かがスカートの裾を踏んでいて前に動けない。振り向けば、進めと言った本人のような思いがした」と語っていました。この状態こそが「0より1の功罪」です。
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