捨てる神あれば拾う神あり、とでもいいましょうか。
希望退職という名の“肩叩き”が拡大する一方で、“潜在能力”に期待し能力発揮の機会を拡大する企業が増えてきました。言うまでもなくその対象は中高年社員です。50歳になった途端、まるで在庫一掃セールにでもかけるように、賃金を下げ、閑職に追いやり、「早くお引き取りいただきたい」圧をあの手この手で企業はかけつづけてきました。
が、やっと、本当にやっとその不遇にピリオドを打つ動きが広がりつつあります。
東京商工リサーチによると、2025年1月1日〜5月15日に上場企業が発表した「早期・希望退職」の募集人員は8711人となり、前年同時期に比べ87%も増加しました。パナソニックHD1万人、日産自動車2万人など、大規模なリストラに踏み切る企業はメディアでも大きく取り上げられました。
大人(20歳以上)の「10人に8人」が40代以上、50代以上に絞っても「10人に6人」という時代に、中高年を切ることの無意味さはこれまで散々指摘してきました。若い社員にはハラスメントを恐れて異動ですら躊躇(ちゅうちょ)するというのに、中高年へのエイジズムを続けるのはおかしい。その上、人員削減のような分かりやすいコストカットは、“目に見えない力”を育む土壌を自らの手で壊しているようなものです。
リストラ発表が市場にコスト削減への期待感を与え、一時的に株価が上昇したり業績が回復したりすることはあります。しかし、長期的には企業が期待するような効果は得られず、再びリストラを行うケースが多いのです。また、たとえ企業業績が上向いても、科学的な分析ではリストラ実施の成果であるとする因果関係は成立しません。
一方で、総務省の労働力調査によると、45歳以上の転職者が増加し、転職後に年収がアップした人の割合も50代で4割に上ります。大企業の管理職経験者を求める中小企業や、海外のメーカーが日本の中高年技術者を採用するケースが増えているのです。ここでの日本人技術者の最大の価値は、長期雇用で蓄積された「知識と経験の豊かさ」です。さらには、国内でも中高年の潜在能力に期待する企業が増えてきました。
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