先週、三井住友銀行が2026年1月をめどに人事制度を変更し年功序列を廃止する方針を示し、大きな話題になりました。
「20代で年収2000万円だってよ。すごいよね!」
「デジタル人材なら5000万円! うらやましい!」
「でも、20代でそんなにもらったらプレッシャーが……」
「やっぱりデジタル専門だと強いよね〜」
「っていうか、シニア社員は減給でしょ〜」
「それもきついね〜」
――などなど、私の周りでもさまざまな声が聞こえてきました。
これまでもIT企業などを中心に「若い皆さん! たくさんお金払いまっせ! 我が社へぜひ!」といった施策を取るケースはありましたが、今回は古くから就職活動で人気上位とされてきたメガバンクです。
同様に2019年、三菱UFJ銀行などが、大規模なリストラ計画を発表した時も話題となりました。
年功序列と長期雇用は、封建的で昭和的なイメージが強い代表的な制度です。高度成長期の最後の置き土産たる年功序列や長期雇用の廃止をメガバンクが宣言したことで、社会の関心を集めたのでしょう。
なにかにつけ諸悪の根源のように言われる年功序列と長期雇用。しかし、どんなに先行研究を探しても、「長期雇用が会社の生産性を下げる」といったエビデンスは見当たりません。さらに年功序列については、むしろ利点を報告する研究が多いのです。
例えば、企業側が長期的な視点で社員を教育し育成できる、社員の帰属意識の上昇、離職率の低下といった具合です。
そもそも「年功序列」とは、「社員=人の可能性を信じる」という経営の基本を、企業側が制度化したものであり、「たとえ無駄金になったとしても、未来に投資しよう」という企業の覚悟です。
人の能力は、短期に開花するものと、長い時間をかけてあるときパッと花開くものとの2つに分けられ、世界をアッと言わせるようなスケールの大きな発想は、膨大な投資と時間が不可欠です。
「世界に追いつけ! 追い越せ!」が合言葉だった戦後の日本が高度成長を実現できたのも、長期雇用と年功序列があってこそといっても過言ではありません。
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