キャッシュレス化が進む中、ポイントは単なる「お得」から「経済活動の一部」へと変貌を遂げている。本連載では、クレジットカード、QR決済、電子マネーを中心としたポイントプログラムの最新動向を追い、企業の戦略やユーザーへの影響などを分析する。
大手町のフォーシーズンズホテル東京。1泊15万円以上、都内トップティアの5つ星ホテルは、皇居の森を見下ろす39階建ての高層ビルに入る。最上階には、ミシュラン1つ星のフレンチレストラン。東京駅から地下直結という利便性と、都心の喧騒(けんそう)を忘れさせる静けさを両立させた、「持てる者」のための空間である。
その3階、グランドボールルーム。11月28日、三井住友カードの「Visa Infiniteブランド発表会」が開かれた会場は、黒とグレーのモノトーンで統一されていた。照明は絞られ、登壇者にだけスポットが当たる。高級時計のブティックか、会員制バーの奥の間か。招かれた者だけが足を踏み入れる世界の入口を、演出しているようだった。
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Visa Infiniteは、三井住友カードが9月に募集を開始した最上位カードだ。年会費9万9000円。プラチナカードのさらに上に位置する。コンシェルジュや空港ラウンジといった定番サービスに加え、「体験価値」を前面に打ち出したのが特徴である。
年会費は9万9000円と高額だが、入会後3カ月以内に100万円を利用すると10万ポイントが付与される仕組みになっており、富裕層でなくとも「初期コストを実質的に回収できるお試し利用」が可能になっている(筆者撮影、以下同)壇上に立った大西幸彦社長は、このカードの狙いをこう語った。「富裕層のお客さまのクレジットカードに対する期待の変化に対応すべく、新たな発想で開発した」「特別な体験価値にとことんこだわった」
続いてマーケティング本部長の伊藤亮佑氏が、富裕層の価値観を明かした。「価格よりも自分にとって価値があるかで意思決定をされる」「お金を出しても普通では買えないものやコトを希求されている」
買えないものを、求めている――。
その直後、年会費を払えば入会できるカードの説明が始まった。プロゴルファー・石川遼とのラウンド、ショパン国際ピアノコンクール入賞者によるガラコンサート、トップシェフとのコラボディナー。いずれも「ここでしか得られない体験」だという。
買えないものを、買う――。
禅には「公案」と呼ばれる修行法がある。師匠が弟子に与える、論理では解けない問いだ。「片手で拍手したら、どんな音がするか」。答えはあるようで、ない。だが考え抜く過程にこそ意味がある。「買えないものを買う」というこのカードの構造も、どこか公案に似ている。
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