発表会の終盤、ステージ袖でショパンコンクール入賞のピアニスト・桑原志織が生演奏を披露した。
モノトーンの会場に、ピアノの音色が響く。グランドボールルームが即席のコンサートホールに変わる。これ自体が、Visa Infiniteの「体験価値」のデモンストレーションなのだろう。出席した記者たちは、会員向けイベントの片鱗を味わったことになる。
会場を出て、大手町の高層ビル群を見上げる。この街には、見上げるしかないものが多い。
大西社長は質疑応答でこうも言った。「体験価値は、日興証券やSMBCの富裕層のお客さまにもコラボレーションで提供していく」。つまり、三井住友カードだけではない。年間取扱高40兆円を誇る同社の資産を、SMBCグループ全体の富裕層戦略の中核に据えようとしている。
「買えないものを買う」とは、ものを買うことではない。ネットワークに参加することだ。カード会社が60年かけて築いた人脈、グローバルなスポンサーシップ、金融グループの顧客基盤。その網の目の中に、自分の席を確保する。
禅の修行僧は、公案に何年も取り組む。答えが出ない。出ないまま座り続ける。ある日、ふと腑(ふ)に落ちる瞬間が来る。言葉にはできない。でも、分かる。それを「悟り」と呼ぶ。
Visa Infiniteが売っているのは、きっとそういうものだ。
バカげている、と思う人もいるだろう。それでいい。公案は万人に開かれていない。
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