Amazon、最大3万人を削減へ 「週5日の出社義務化」で退職見込んだはずが……なぜ?

» 2025年10月28日 18時56分 公開
[ロイター]

 米Amazonは、コロナ禍の需要急増時における過剰採用の是正と経費削減の一環として、早ければ10月28日(現地時間)から最大3万人の管理部門従業員を削減する計画だ。3人の関係者が明らかにした。

 削減数は、Amazon全従業員数約155万人のうちのごく一部だが、管理部門の約35万人の従業員の約10%に当たる。これは2022年末に約2万7000人を削減して以来、同社史上最大規模のとなる見通しである。Amazonの広報担当者はコメントを控えた。

a Amazon、最大3万人の管理部門従業員を削減する方針(出典:ロイター)

「週5日の出社義務化」は効果発揮せず

 Amazonは過去2年間、デバイス事業やコミュニケーション、ポッドキャスティングなど複数部門で小規模な削減を実施してきた。関係者によると、今回の削減は人的資源部門やオペレーション、デバイスおよびサービス部門、Amazon Web Services(AWS)など、幅広い部門に影響を及ぼす可能性があるという。

 アンディ・ジャシー最高経営責任者(CEO)は、マネージャー層の削減を含む「過剰な官僚主義」の是正を目指す取り組みを進めている。ジャシー氏は非効率を特定するための匿名の苦情受付ラインを設け、「これまでに約1500件の意見と450件を超える業務プロセス改善を得た」と今年初めに述べていた。

 ジャシー氏は6月、「AIツールの活用拡大がさらなる人員削減につながる可能性が高い」とも発言している。

 米調査会社eMarketerのアナリストであるスカイ・カナヴェス氏は「今回の動きは、Amazonが企業部門でAIによる生産性向上を十分に実現し、相当規模の人員削減を支え得る段階に達したことを示している」と述べ、「AIインフラ構築という長期投資を短期的に補う必要にも迫られている」と指摘した。

 今回の削減の最終的な規模は現時点では明確ではない。関係者によれば、Amazonの財務上の優先事項の変化に応じて人数は変動する可能性があるという。米誌Fortuneは、人事部門が約15%削減される可能性があると報じている。

 また、今年初めに導入された「週5日の出社義務化」というテック業界でも厳格な方針は、想定していた退職を十分に生まなかったと、関係者2人が述べた。今回の削減規模が大きくなった要因の一つだという。なお、本社から遠距離に居住するなどの理由で毎日出社していない従業員の中には、「自発的退職」と見なされ、退職金なしで退社を求められているケースもあるとされる。これは企業側にとってコスト削減となる。

 テック業界の人員削減を追跡するWebサイト「Layoffs.fyi」によると、今年に入ってこれまでに216社で約9万8000人が職を失った。2024年通年では15万3000人だったという。

 Amazonの最大の収益源であるクラウドコンピューティング部門のAWSは、第2四半期の売上高が309億ドルとなり、前年同期比17.5%増を記録した。しかし、米Microsoftの「Azure」が39%増、米Alphabetの「Google Cloud」が32%増であったことを考慮すると、その伸びは相対的に低調である。

 推計では、AWSの第3四半期売上高は約18%増の320億ドルと見込まれ、前年の19%増からやや減速するとみられる。同部門は先週、約15時間に及ぶインターネット障害により、SnapchatやVenmoなど人気サービスの多くが停止した影響から、いまだ立て直しの途上にある。

 Amazonは今年も大規模な年末商戦を見込んでおり、倉庫などの業務を補うため、過去2年と同様に25万人の季節労働者を雇用する計画である。さらに、同社は人的資源部門の中で多様性推進を担当するチームの再編を発表した。ロイターが確認した社内メモによると、主に既存社員の昇進を伴う変更であるという。

a Amazonは年末商戦に向け、25万人の季節労働者を雇用する計画(出典:ロイター)

 10月27日のAmazon株は1.2%高の226.97ドルで取り引きを終えた。なお、同社は10月30日に第3四半期決算を発表する予定である。

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