保守の方法といえば、トラブル発生時に部品交換や機器調整を実施する「事後保全」か、定期点検で部品を交換し、故障を未然に防止する「予防保全」が一般的だ。
しかし、イトーキ 設備機器事業本部の堤康次氏はこの方法のリスクを指摘する。
「事後保全では、トラブル発生時に復旧まで時間とコストがかかる場合がある。予防保全は実施時期が固定されており、十分使える部品にもかかわらず定期点検で交換してしまうといった無駄や、逆に交換が遅かったことにより故障が発生してしまうというリスクがある」
自動化・省人化が加速している物流現場には、AIを活用して機器や設備の不具合・故障を予知してトラブルを未然に防ぐ「予知保全」が必要だと力説する。
そこでイトーキは、日本オラクルが提供する「Oracle Autonomous AI Database」「OCI Data Science」を基盤に、故障の兆候を検知し、計画的なメンテナンスを実現する予知保全システム「スマートメンテナンス」を開発した。
スマートメンテナンスは、まず各機器に取り付けたセンサーや制御装置から稼働時間、動作回数、動作距離などのデータを収集。集めた各種データをAIによる異常検知アルゴリズムが判断し、設備の状態や故障の兆候、つまり「いつもと違う」状況を把握・検知する仕組みだ。これにより、トラブルを未然に防ぎつつ、必要以上に早いタイミングでの部品交換を削減できるという。
加えて、スマートメンテナンスには入庫制限機能を搭載。異常が検出された機器については、自動または手動で入庫制限をかけ、出庫のみを継続稼働することで影響を局所化し、システム全体の稼働停止を防ぐ狙いだ。「入庫制限機能により、物流現場における突発的なダウンタイムを最小限に抑え、安定した運用を維持できます」(堤氏)
スマートメンテナンスと組み合わせて搭載するリモートメンテナンス機能は、トラブルが発生した現場に行かなくても、制御盤の画面操作や一部のソフトウェア更新が可能。トラブル発生時の復旧時間の短縮や、保守員の派遣頻度を減らすなど人的負荷の軽減が期待できるという。
スマートメンテナンスとリモートメンテナンスと組み合わせた保守サービス「ITOKIアドバンスドメンテナンス」は、まず既存製品「システマストリーマー SAS-R」の保守サービスプランとして2026年1月から提供予定だ。今後は、他の物流設備や関連分野への応用も視野に入れているという。
現在、イトーキが展開する設備・パブリック事業において、保守分野の売上比率は約10%だ。湊氏は「ITOKIアドバンスドメンテナンスを起爆剤に保守ビジネスを確立し、売上比率を30%まで引き上げる」と意気込む。
生産性は測れるか? イトーキ×松尾研、オフィス投資の効果「見える化」に挑む
「生産性が高い人は、高い人同士でよく話す」 イトーキ×松尾研、“成果が出るオフィス”の条件を探るCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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