冒頭の30代の「エリート」社員が陥った罠は、ここにある。
会社全体の業績と個人の評価は別物だ。会社が過去最高益を出したとしても、個人が評価基準を満たしていなければ評価は下がる。
こんなケースを想像してほしい。
会社は新規事業に力を入れる方針を打ち出した。しかしこの社員は「既存事業で十分稼いでいる」と主張し、新しい取り組みに消極的だった。リスキリングを推奨されても参加しなかった。
成果評価では平均的な点数を取れたかもしれない。しかし能力評価では「新しいスキル習得に消極的」として減点され、情意評価では「会社の方針に従わない」として大幅に減点された。
結果として、総合評価が下がり、ボーナスも減額されたのだ。
この30代社員は「成果を出しているのに」と不満を口にする。しかし評価は成果だけではない。会社の評価制度を正しく理解していれば、このような事態は避けられたはずである。
そのことを正しく頭に入れないと、納得のいくボーナスはもらえないだろう。
評価制度は、単なる評価ツールではない。真面目に取り組む人が報われる組織にするためのツールであるべきだ。
しかし、そのような評価制度を理解するには努力が必要である。会社の人事制度を読み込み、わからないことは上司に質問する。今期の方針を理解し、自分の行動を方針に合わせていく。
このプロセスは面倒かもしれない。しかし、これこそが「評価される技術」なのだ。
評価制度について質問することを「いやらしい」と感じる人がいる。しかし、それは間違っている。「今期はここまでやるので私を評価してください」と事前に約束できる人こそ、評価されるべき人材なのだ。
事前に約束できず、事後に文句を言う思考の人が評価されることなどない。つまり、その思考だからこそ会社に評価されないのかもしれないのである。
評価制度を学ぶことは、自己投資だ。その投資を怠った30代社員は、プライドを傷つけられただけで終わった。しかし、この失敗から学べば、次のボーナスは違う結果になるはずだ。ぜひ評価制度を確認し、主体的に行動してほしい。
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