テレワーク時においては、労働しているかどうかを目視で確認することが難しいことから、労使間で労働時間に対する係争が起こる可能性があります。ある時間に労働していることを証明することが難しく、かといって自宅というプライベート空間を使用者が監視することも適切ではありません。そのため、テレワーク時においてはみなし労働時間を適用することが良いのではないかとの議論がされています。
現在、事業場外みなし労働時間制、企画業務型裁量労働制、専門業務型裁量労働制の3つでみなし労働時間が適用されますが、労働時間が算定し難いことや特定の業務でしか適用できないなどの条件があり、必ずしもテレワーク時に適用できるものではありません。そのため、テレワークの場合にみなし労働時間を適用できる制度が新たに検討されています。
テレワーク時のみなし労働時間制が導入された場合、実際に何時間業務に費やしたかに関わらず、一定の労働時間働いたとみなされます。
現在、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制については、実施要件の一つとして労働者の同意をとることが定められています。ただ、テレワーク時のみなし労働時間で労働者の同意をとるとなった場合、特に大企業では多くの従業員で個別に同意をとらなければなりません。
事務負担は大きなものとなりますが、労働者にとっては長時間働いても一定の労働時間になるといった側面もあるため、制度の趣旨を説明し同意をとっておくことが労使間のトラブル防止にもつながります。労働者の同意を要件とするか否かは、今後検討する必要があります。現行のみなし労働時間制でも起こり得ることですが、いくら働いても労働時間、報酬が変わらないため、労働者側が不満を感じることもある制度といえます。
使用者からすれば、労働時間の管理コストが少なくなるという便利な面もありますが、長時間労働が常態化してしまうと労働者の健康悪化が考えられます。
現在のみなし労働時間制では、健康確保措置が義務付けられているものもあり、テレワーク時のみなし労働時間制が実現した場合にも、同様の健康確保措置が義務付けられる可能性があります。
現在のみなし労働時間制については、労使協定の締結や労使委員会での決議が必要とされています。まだ法改正自体が議論中であるため、詳細は決まっていませんが、もし同様に労使協定の締結などが必要になった場合は、それに対応する必要があります。
みなし労働時間制は長時間労働や、労働者への不満に対するケアがより一層必要な制度でもあります。これまでは特定の業務に限定されるなど、適用要件が厳しいものでしたが、テレワークの場合には恐らく業務を限定することは想定されません。
広くみなし労働時間制が適用されることになった場合、労働者が長時間労働に陥ったり、「いくら働いても残業代がつかない」といった不満の声が出たりすることも想定されます。労働者のエンゲージメントへの影響も考慮して、導入を検討する必要があります。
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