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【40年ぶりに労基法改正へ】働き方はどう変わる? 押さえるべき3つの変更点連載「情報戦を制す人事」(2/4 ページ)

» 2025年12月19日 08時00分 公開
[井上翔平ITmedia]

テレワーク日の部分的フレックスタイム制導入

議論の背景

 フレックスタイム制とは、従業員が始業・終業時刻を自由に決定できる働き方の制度です。1日の労働時間は定められていません。割増賃金については、最長3カ月の清算期間の中で定められた法定労働時間の総枠を超えた分を支払うとされています。清算期間については、全てフレックスタイム制で統一する必要があり、一部を固定労働時間制にするといったことはできません。

 しかし現在、1週間の中で出社とテレワークが混在するハイブリッドワークという働き方をとっている企業も見られます。ただ固定労働時間制の場合、仮にテレワーク日があったとしても、休憩時間以外の中抜けができず、せっかく自宅で仕事ができていても子どもの送り迎えなどができないといったことが起きています。

 このような場合に、テレワーク日など一部の労働日にフレックスタイム制を部分的に導入できるようにし、労働者の働き方の柔軟性を高めることが議論されています。

部分的フレックスタイム制が導入された場合の働き方

 改正が実現し、一部の日に部分的にフレックスタイム制が導入された場合、以下のような働き方が可能となります。

月・水・金(出社日): 午前9時〜午後6時の「固定時間勤務」

火・木(テレワーク日): コアタイムなしの「フレックスタイム勤務」

 テレワークの日は中抜けして、育児や通院などの私用を済ませられるため、柔軟な働き方が実現できます。しかし、上記のような働き方が実現した場合、固定労働時間制とフレックスタイム制の異なる働き方が混在するため、運用においては以下の点を考慮しなければなりません。

【運用上、検討するべき観点】「法定労働時間の総枠」の計算方法

 現在のフレックスタイム制において、清算期間内の法定労働時間の総枠を定める場合、計算式は以下の通りです。

法定労働時間の総枠 = 1週の法定労働時間 × 清算期間の暦日数 ÷ 7日

 ただし、固定労働時間制とフレックスタイム制を併用する「部分的なフレックスタイム制」の場合、上記の計算式は適用できません。

 例えば、清算期間を1カ月とした際に、月の勤務日のうち固定労働日の日数(12日)とフレックス勤務日の日数(8日)が混在した場合、「法定労働時間の総枠」をどのように算出するかという明確なルールが、現状では定まっていません。実労働時間の算定や、清算期間を通じた労働時間の管理を適正に行うためにも、この計算方法に関するルール作りが今後必要といえます。

【運用上、検討するべき観点】1週間当たりの法定外労働時間の計算方法

 固定労働時間制とフレックスタイム制が混在する場合、週の法定労働時間の取り扱いはどのようにすべきでしょうか。

 フレックスタイム制は1日あるいは1週間の法定労働時間を超えて柔軟に働ける制度であり、単純に固定労働時間制の場合に想定している週40時間の法定労働時間を当てはめると、制度の趣旨から外れてしまいます。

 現行のフレックスタイム制では、清算期間を平均して週法定労働時間を超えてはならない(超えた場合は時間外労働)とされていますが、1週間の中で固定労働時間制、フレックスタイム制が混在する場合は想定されておらず、これについてもルール作りが今後必要でしょう。

 このように固定労働時間制とフレックスタイム制の2つの異なる計算ロジックが入り混じるため、勤怠管理や給与計算が複雑化することが最大の懸念です。

【企業が運用する時の注意点】勤怠管理システムの対応

 固定労働時間制の労働時間、フレックスタイム制の労働時間を分けて集計する必要があります。現時点でこのような部分的フレックスタイム制度は存在しないため、勤怠システムで新たに設定変更を行わなければなりません。

【企業が運用する時の注意点】就業規則、労使協定の変更

 フレックスタイム制は就業規則における規定に加え、対象労働者や清算期間、清算期間内の総労働時間などについて労使協定を締結しなければなりません。詳細はまだ決まっておりませんが、部分的フレックスタイム制が法改正で実現した場合にも同様の対応が求められる可能性が高いです。

 上記のように部分的フレックスタイム制の導入によって、管理コストが増加します。これを考えると部分的フレックスタイム制を導入しない、あるいは完全なフレックスタイム制を導入する方が、長期的にはシンプルかつ管理コストが少なくすむ可能性があります。もし改正が実現した場合には、どこまで費用対効果が得られるかを慎重に検討しましょう。

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