では、令和の社員旅行の目的は何なのでしょうか? 最近は福利厚生=第3の賃上げと捉えられているので、賃上げが目的なのでしょうか。
もし、社員旅行を復活させるなら、単なる行事で終わらせず、組織の活性化につなげるべきですし、そのための最良の手段になるのが社内イベントです。なので、ぜひともトップは「目的」と「トップとしての思い」を共有してください。その上での社員旅行であり、社内イベントなら、組織の結束と成長につながります。
そのためには「福利厚生」としてではなく、「業務の一環」にしてください。
実際、数年前から運動会や駅伝大会、社員旅行などを復活させる企業は増えています。講演会や取材などで、トップや現場の社員たちの声を聞いたところ、トップは例外なく「信頼・敬意・共感」の経営三原則を徹底していましたし、ほとんどの企業が「業務」として取り入れていました。
ある企業では桜の季節のお花見を、新入社員の最初の仕事にしていました。日程・場所を決めるのも新人の仕事。そのためには新人は先輩社員とコミュニケーションを取る必要がありますし、先輩も「新人のため」とサポートします。
新人たちは、
「最初に先輩たちに顔と名前を覚えてもらえたので、居場所ができた」
「仕事だと思うと、全然嫌じゃなかった」
「同期のつながりも深まった」
と笑顔で話し、
上司や先輩たちは
「若い社員と話をするのが難しい時代だから、コミュニケーションのきっかけになってよかった」
「自分が新人のとき、朝から席取りさせられて『こんな会社辞めてやる!』と思っていたので、今の形がいいと思う」
と話してくれました。
こういったつながりが、
•自らに課せられた仕事を遂行する
•同僚や上司と良好な人間関係を築く
•組織文化、組織風土、組織の規範を受け入れる
•組織の一員としてふさわしい属性を身に付ける
といった新入社員の「組織社会化」=適応の助けになります。
また、運動会を復活させた企業では、社員の家族を参加させることで「ママさん同士のつながりができた」「男性の育児休暇取得率があがった」というプラスの効果があったそうです。「〇〇さんは育児もちゃんとやってるんですって」「△△さんのご主人の上司は育児にすごい理解があるんだって」といった第三者情報が、男性社員の育児参加を後押ししたのです。
いずれにせよ、会社=COMPANYの語源は「パンを共に食べる仲間」です。福利厚生であろうとなんだろうと、誰も取り残さないイベントが重要で、そのためには「何を目的にしているのか?」という会社や経営者の思いの共有は極めて大切です。
時代変われど人の「心」は変わりません。誰だって認めてほしいし、「自分はここにいていいんだ」と思いたい。その「人の素朴な欲求」を得るためにつながりに投資する。
簡単にSNSでつながり、効率化が進む現代だからこそ、無駄な時間・無駄な空間・無駄話が求められています。何が本当に「無駄」なのか。それを見極めるまなざしが企業経営に求められているのです。
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)、『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか - 中年以降のキャリア論 -』(ワニブックスPLUS新書)、『働かないニッポン』 (日経プレミアシリーズ) 、『伝えてスッキリ! 魔法の言葉』(きずな出版)など。
新刊『「老害」と呼ばれたくない私たち 大人が尊重されない時代のミドル社員の新しい働き方』(日経BP 日本経済新聞出版)発売中。
「また休むの?」子育て社員に“絶対言えない本音”──周囲が苦しむサポート体制から脱せるか
“静かな退職”は悪じゃない なぜ「日本人は休めない」のに「生産性が低い」のか
早期退職ブームの裏で 中高年を「頼れるおじさん」に育てられる職場、3つのポイント
無駄すぎる日本の「1on1」 上司が部下から引き出すべきは“本音”ではないCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング