DXの出発点は「現場を否定しない」 老舗あんこメーカー「ナニワ」が1000万円の削減を生んだ傾聴力とは?(2/2 ページ)

» 2026年01月15日 08時00分 公開
[太田祐一ITmedia]
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棚卸しは3時間→30分に短縮――2つの“アシスト”が生んだ成果

 改善アシストのミッションを実現するため、カミナシレポート導入による在庫管理帳票のペーパーレス化を実施した。導入前は、手書きの帳票で、例えば生あんの棚卸し作業に3人の従業員で計3時間ほどかかっていた。それが、カミナシレポートを導入したことで1人だけの作業になり、わずか30分で完了したという。つまり、1日で2時間30分の作業が削減。年間で200万円の経費削減に成功した。

 一方、品管アシストのミッション達成に関しては、食品安全へのアプローチを強化。菌の住処をみつけ、工場内の清掃プロセスの見直し/再構築による品質向上を目的とした「cache cacheプロジェクト」を実施した。外部企業による工場調査から始め、指摘事項を意識した清掃レポートを策定。その後、実際にレポートに沿って清掃を実施し、都度検証・評価を行った。最終的には清掃工程を動画マニュアル化し、誰でも閲覧できるようにした。

 「cache cacheプロジェクトの結果、一般生菌の平均を半数以下にすることに成功した。その結果、生産したあんこの賞味期限が延長でき、販路拡大も実現。このプロジェクトは今後防虫防鼠対策へと応用してく予定だ」(杉本氏)

「働きやすさ」がDXを定着させる

 従業員の働き方向上、育成にも注力。外部コンサル会社に委託し、現場改善活動を実施した。付帯業務の集約、作業改善、非稼働時間短縮といったテーマごとに改善活動を行うほか、現場にはQRコードを設置。作業者からの困りごとを収集したことで、現場に即した改善活動につながり、従業員のモチベーションが向上。その結果、最終的に年間5%も生産性が上げられ、製造業では珍しい週休2日制を実現した。

 また、同社が提唱する“傾聴力”を上げるために、Beスタッフィングが提供する定額制オンライン集合研修サービス「Beスク」も導入。主に現場でのコミュニケーションスキルに関連した講座を自由に受講できる体制を構築した。月額4万円、約50人の従業員を対象に全30講座から好きな授業を受けることができる。

 これらの働き方改革により、従業員のエンゲージメント向上、離職率の低下、生産量の向上などを実現。雇用に対する多大なインパクトも残せたという。

 「当社が一番重要だと考えていることは“傾聴力”。そこで、他者の話を聴き、寄り添うスキルが自然と身に付けられるような講座を提供するBeスクを導入した。DXには専門技術はもちろん、現場(同僚だけでなくお客さまや同業者も含む)の本音に耳を傾け、受容することで“真に役立つDX”が実現できると考える。今後も、DXを中心に現場改善を繰り返し、食品安全と業務効率化の両立を実現していきたい」(杉本氏)

 ナニワは、これらのDX施策を推進したことで、前期は年間500時間の作業時間の削減に成功した。現在、ナニワで導入している複数のDXツールのラーニングコストは約1000万円。杉本氏は「実際にDXを推進したことで、業務効率化による1000万円の改善効果を生み出すことができた。今後も1000万円以上の工数削減を継続しながら、永続的にITツールを実質タダで使い続ける体制を整えていきたい」と話した。

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