東京商工リサーチが実施した2025年3月期の「私立大学経営法人」動向調査によると、全国の私立大学を経営する545法人のうち、半数を超える287法人が2025年3月期決算で赤字だったことが分かった。受験者数や入学定員の増加には限界があり、収入が伸び悩む一方、物価高や人件費上昇など運営コストの増加を吸収できず、採算悪化が深刻さを増している。
545法人の売上高合計は6兆8265億円(前期比1.5%増)と増加したものの、利益は1559億円(同29.1%減)にとどまり、前期から約3割減少した。2年連続で「増収減益」となり、利益水準は2024年3月期に続いて大きく落ち込み、2年間でほぼ半減した。
赤字率が最も高かった地域は「四国」で、88.9%と9割近くに達した。次いで「東北」「北陸」がともに66.7%、「中部」が63.1%、「北海道」が60.0%と、地方を中心に6割を超える地域が目立った。
売上高10億円未満の49法人(構成比8.9%)の赤字率は69.3%と約7割に達した。小規模な大学ほど運営コスト上昇の影響を受けやすく、採算性が低下している。地域差に加え、事業規模による利益格差も一段と鮮明になっている。
売上高トップは、医療系を中心に8学部を設置する順天堂大学を運営する「順天堂」で、2215億6100万円と唯一2000億円を超えた。2位は学生数が最も多い「日本大学」、3位は「慶應義塾」、4位は西日本で唯一トップ10に入った「近畿大学」、5位は全国に系列校を持つ「東海大学」が続いた。
売上高トップ10の顔ぶれは前年と変わらず、いずれも医学部と附属病院を持つ総合大学や、医療収入の多い医科系大学だった。利益ランキングでは「帝京大学」が234億9600万円で首位となり、同グループの「帝京平成大学」も9位(74億5600万円)に入った。利益上位も医学部や歯学部を持つ医療系が並び、売上高と利益の両方でトップ10入りしたのは「慶應義塾」と「近畿大学」の2法人にとどまった。
箱根駅伝に出場した20大学のうち、売上高100億円を超えた大学は19校で、その約8割が黒字だった。知名度の高さが学生確保や収入の安定につながっており、経営基盤の強さが際立った。
少子化を背景に、入学者数の減少は一段と深刻化している。2024年度の入学定員充足率が100%未満だった私立大学は全体の59.2%に上り(日本私立学校振興・共済事業団公表)、約6割の大学が定員割れに陥った。特に人口減少が進む地方や小規模な短期大学、女子大学では学生確保が難しく、来年度以降に募集停止や閉校を決断する大学も相次いでいる。
東京商工リサーチは、「これまで培ってきた歴史や実績、ブランド力だけでなく、研究・教育や就職支援など多方面での特色と差別化が問われている」と指摘する。その上で、「私立大学が生き残るためには、経営力の強化と、淘汰の波に備える現実的な経営判断が不可欠だ」と警鐘を鳴らしている。
本調査は、東京商工リサーチの企業データベースから、大学および短期大学を経営する法人の業績を抽出した。2025年3月期を最新期とし、3期連続で業績が判明した545法人を対象に分析した。売上高は事業活動収支計算書の教育活動収入計、利益は基本金組入前当年度収支差額を用いた。法人ベースの集計のため、附属高校などの系列校や医療事業、付随事業による収入も含まれている。
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