――パッケージ以外の事業は、いかがでしょうか。
内藤: 屋外や車内のポスターも同様です。例えばバス停のポスターには「昼間は白い紙に見え、夜間は裏の電球を透かさずにきれいに光を通す」という相反する機能が求められます。ユポの内部にある微細な気泡(ボイド)構造が光を乱反射するため、この高度な表現が可能になるのです。高くても選ばれる製品には、必ず技術的な理由があります。
――収益の柱になり、かつ競争力になっている製品は何でしょうか。
内藤: インモールドラベルです。米国だけで年1万トン以上出ています。工場のキャパシティーが4万トンで、そのうちラベル関係が全体の7割ほど。そのメインがインモールドラベルです。
――インモールドラベルの分野で、ユポが選ばれているのはなぜでしょうか。
内藤: 印刷がきれいだからです。米国はボトルが大きい。そこに普通の粘着ステッカーを貼るとしわになってしまいます。しわが入らないことと、ブランドの訴求力です。米国ではファースト・モーメント・オブ・トゥルース(真実の瞬間)と呼びますが、店頭でパッと見た瞬間に、手に取ってもらう必要があります。そのためにはきれいなラベルが要ります。
次に、棚から落ちても割れてはいけないので強度が必要です。最近の課題は環境対応で、ボトルを薄くしてプラスチックを節約したいという要望が出ています。そうなると、ラベルがボトルの強度に貢献しなければならない。さらにリサイクルのために、印刷したラベルは剥がれなければいけない。今はしっかり接着していますが、リサイクル工程に入ると剥がれるものを開発しました。要求が一つずつ積み上がっているのです。
工程面でのメリットも絶大です。通常のシールやシュリンクラベル(熱収縮フィルム)は、ボトルを成形した後に冷却時間を置き、後からラベルを貼る工程が必要です。一方、インモールドラベルはボトル成形と同時にラベル貼りが完了するため、ラベリング工程そのものを削減できます。ボトル収縮を待つ「1日」のロスタイムがなくなり、すぐに充填・出荷できる。生産プロセスの合理化という価値も提供しているのです。
――インモールドラベルが今のように主力製品になるまでには、時間がかかったのでしょうか。
宮口: 次世代のラベリング方式を訴求し始めてから、軌道に乗るまで10年ほどかかりました。しかも、優れたラベル単体を作っても普及しません。成形金型にラベルを自動で挿入する専用ロボットが必要になるからです。
ですから当社は、ロボットのカタログを持ち、金型の加工技術も把握した上で、ラベル印刷会社、金型・成形メーカー、ブランドオーナーまで、サプライチェーンの全プレイヤーを自ら回りました。「金型温度は何度に設定する」「冷却時間は何分何秒にする」といった現場の加工条件まで自社で網羅し、指南していったのです。
内藤: 素材だけを売るのではなく、加工や導入プロセスまで丸ごと指南する。このエコシステム全体を握るアプローチこそが、後発の競合他社に対する決定的な参入障壁になっています。
米国の場合は、ブランドオーナー、最大手の成形メーカー、最大手の印刷会社の3者がセットになって動いており、一度このエコシステムに入り込めば、容易には他社にリプレースされません。
30年以上やってきて、それでも世界のラベル市場に占める当社のインモールドラベルのシェアは2%です。裏を返せば、残りを取ったらどうなるかという話でもあります。ただ、ラベルだけ売っていればいいものではありません。導入方法まで指南する必要があります。
――インモールドラベル普及のきっかけになりそうな動きはあるのでしょうか。
内藤: 環境対応がトリガーになると考えていました。2020年前後にプラスチック関連の国際的な取り組みが立ち上がったときは追い風になると思ったのですが、その勢いはしぼんでしまいました。
一方で、ブロー成形で作るボトル、つまりシャンプーや洗剤の容器のようなものは、形状が製品ごとに異なる一品ものなので、当社の領域として残ります。一方で、インジェクション成形で作るコンテナ入りのアイスクリームのような、単純な形状の容器は汎用(はんよう)のフィルムで対応できてしまうので、価格が安すぎて当社は入っていけません。市場が大きくなれば似た製品も出てきますから、あの手この手でさらに先へ進む必要があります。
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