今、スーパーマーケットが大転換期を迎えた:GMS凋落、地方再編(3/3 ページ)
流通大手の総合スーパー(GMS)事業の不振や、地方を中心とした業界再編など、日本のスーパーマーケット業界を取り巻く動きが目まぐるしく変化している。特集「スーパーマーケットが生き残る道」では、そうした状況下での各社の取り組みなどを見ていく。
生き残りをかけて新たな戦略を模索
経営統合などでライバル他社と手を組み、規模を拡大して生き残りを図るスーパーがいる一方で、独力でさらなるビジネス成長を遂げようとする企業もある。
そうした企業の代表的な取り組みの1つが「ネットスーパー」である。これまでの店舗販売とは別に新しい販売チャネルを開拓すべく、多くの企業がネットスーパーの立ち上げ、強化を急いでいる。セブン&アイは、実店舗やオンラインなどあらゆる販売チャネルや流通チャネルを統合する「オムニチャネル」を最優先の事業戦略として推進している。イオンも同様にオムニチャネルの専任組織を新設した。
大手2強だけではない。2015年2月期通期の営業利益を前年比42%増と大幅に伸ばした食品スーパー、ライフコーポレーションもネットスーパーに本腰を入れる。ライフは今年4月にネットスーパーで購入した商品を宅配以外に、実店舗に設置するロッカーでも受け取れるサービスを始めており、今後さらに対応店舗数を増やす予定だという。
もう1つの動きが「脱チェーンストア」である。米国発祥のチェーンストア経営モデルを取り込んだ日本のスーパーは効率性や品ぞろえの豊富さなどによって消費者の心をつかみ、八百屋や肉屋といった既存の個人商店に取って代わった。全国規模にスーパーが広がり淘汰が進んだ結果、今やチェーンストアだらけになってしまい、差別化が難しくなったのである。
そうした中でアンチテーゼとして出てきたのが、個人経営時代の手法を踏襲して業績を伸ばすスーパーである。その代表例が東京・世田谷に本社を置く食品スーパー、オオゼキだ。同社は他のスーパーを引き離す経常利益率7.8%という驚異的な数字を出している。その秘けつといえるのが、脱チェーンストアにある。
同社は顧客を中心に据え、きめ細かい対応をする。その裏には社内で職人を育成する仕組みがある。通常のスーパーだと6〜8割がパートタイム社員で、ルールとマニュアルによって管理されている。しかし、オオゼキは正社員が7割で、一人一人が自分で考えてオペレーションしている。人件費はかかり、場合によっては非効率なやり方も散見されるが、結果としてそうした手法が顧客の支持を集めているのである。
チェーンストアという画一的なやり方だったり、効率性ばかりを重視したりするのではなく、人材に投資し、顧客に還元する攻めの経営が、今の消費者に求められているのかもしれない。
本特集では、従来とは異なる戦略や取り組みで生き残りをかけるスーパー各社の攻防を伝えていく。
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