「このままだと企業の4割が消える」――経産省が“攻めのIT”を後押しするワケ(後編)(1/2 ページ)
企業が「攻めのIT」を実践するには経営層の理解が必要――。経営層にIT投資の重要性を知ってもらうにはどうすればいいか。その問題意識から「攻めのIT経営銘柄」は生まれたという。
「ITを戦略的に活用できない企業は“消えていく4割”にまわってしまう……そんな危機感を持っています」――国を挙げて“攻めのIT”を推進する背景を経済産業省に聞く本インタビュー。後編は、同省が東京証券取引所と協力して「攻めのIT経営銘柄」を選出した背景、そして“意外だった”というその反響について聞いた。
社長にIT投資への興味を持ってもらうには?
“攻めのIT”を推進する経産省が、東京証券取引所とタッグを組んで、IT改革に積極的な企業を「攻めのIT経営銘柄」として選出したのは2015年5月のこと。企業や機関投資家からの問い合わせも多数受けるなど、各方面から注目を浴びることとなった。
「攻めのIT経営銘柄」の企画は「企業の経営層にITを重要課題と認識してもらうためにはどうしたらよいか?」という問題意識から生まれたという。「補助金や表彰といった案も考えましたが、補助金に応募するのはもともと積極的な企業なんですね。私たちとしては、そうでない企業にもはたらきかけたいわけですが、消極的な企業にお金をあげても意味がない。表彰もうれしいかもしれないですが、インパクトが足りないのではないかと思いました。
もっと、社長や重役が普段から気にしていることは何なのかと考えたときに、“株価”にたどり着きました。投資家に関連するものであれば、敏感に反応していただけるのではないかと考え、『攻めのIT投資銘柄』を選ぶことにしたのです」(経済産業省 商務情報政策局の石川正樹審議官)
応募企業の数「まだまだ足りない」
銘柄の選定は、上場企業約3500社にアンケートを送り、回答があった企業を対象に行われた。初年度となる今回、回答した企業数は210社と期待した数よりもだいぶ少なかったそうだ。その理由として、「初年度ということもあり、各企業に情報が行きわたらなかったことや、この調査に企業の関心がまだ向いていないことが挙げられる」(経産省担当者)という。
特に後者のケースは、上場企業においてもまだ「攻めのIT経営」の考え方に合致しない企業が多いことの表れでもあろう。具体的なIT活用施策を盛り込んだ経営計画を株主などに公開していくことも、経産省と東証の考える「攻めのIT経営」における重要な要素だからだ。
とはいえ、銘柄の発表後は対象企業や投資機関、IT関連団体など多方面から“これからも続けてほしい”という声が多かったという。次年度も実施するかどうかは未定とのことだが、「実施するならば、ROEの取り扱いも含めて調査方法をブラッシュアップするつもりだ。さらに多くの企業に参加してもらいたい」と担当者も意欲的だ。
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