3つのエンジンから分析するエコカー戦線の現状:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/6 ページ)
今やクルマもエコがブームだ。世の中の環境に対する配慮というのはもちろんだが、利用者にとっても燃費の良いクルマに乗るのは決して悪いことではない。今回は各種エンジン技術を軸にしたエコカーの現状を解説する。
30年前、10km/L程度の実効燃費は、乗用車として悪くない燃費だった。12km/L走ればなかなかだし、14km/L走ったら拍手喝采。Dセグ、Eセグあたりのちょっと大きいクラスになると7〜8km/Lが妥当なラインだったのだ。以来、徐々に燃費は良くなり、特にここ10年は飛躍的に向上した。今やガソリンエンジン車で14km/Lくらい走っても誰も驚かない。実走行でしれっと20km/L走るクルマが増えているのだ。
ここしばらくの間に筆者が実際に走ったクルマの燃費結果をざっと挙げてみる。筆者の走り方はおとなしい方だが、さりとて特別にエコ運転を心掛けて無理に作った数字ではない。あくまでも普通に運転した結果だ。
- 「フォルクスワーゲン up!」 27km/L 都内と高速
- 「レクサス IS300h」 20.5km/L 高速中心
- 「トヨタ プリウス」 20km/L 郊外市街地
- 「マツダ ロードスター(ND)」 20km/L 郊外市街地
- 「フォルクスワーゲン ゴルフ トゥーラン」 14.5km/L 都内と高速
- 「ボルボ V40 T4」 14km/L 高速中心
マツダの新型ロードスターは、スポーツカーでありながらさまざまな仕組みで低燃費化を図っている。マニュアルトランスミッションのトップギヤをギヤ比1.00に設定しているのは、ギヤを介さず直結にすることでギヤの摺動ロスを排除するため。ODレシオを使うより利得が多いという
このほか業界関係者の知人がFacebookで燃費レポートしていたのを見聞きした経験からの印象だが、ハイブリッドとディーゼルを中心に、特別に燃費の良いクルマが20km/Lラインに乗っている。この20km/Lラインというのは現時点で「トップクラス」と理解していいだろう。
up!の27km/Lはちょっとでき過ぎだが、実際にそれだけ走ったので仕方がない。2人乗車で写真機材満載だったから、まだ向上の余地がある。フォルクスワーゲンが全力で燃費効率を目指したAセグメントのup!はいかにもだが、不思議なことに20km/Lラインに到達するクルマは割と「らしくない」クルマも少なくないのだ。レクサス IS300hや「アテンザ ディーゼル」あたりのDセグメントの比較的重いクルマ、スポーツカーとして作られたロードスター、「ホンダ S660」あたりの「多少は燃費が悪くても……」というクルマが20km/Lラインに達する例を見掛けるのだ。
スポーツカーとはいえ、車両重量が軽いロードスター、S660あたりのモデルは強い。しかしとても軽量とは言えないISやアテンザを見ると、やはりハイブリッドやディーゼルはそれだけの効果があるということになる。
その下に14〜15km/Lのクラスがある。多少は重量的ハンデがあっても、何らかの低燃費対策をしているクルマだと狙える。例えばゴルフ・トゥーランは小排気量ターボ、ボルボV40 T4はディーゼルだ。
ボルボはV40にディーゼルエンジンを搭載したD4を追加した。ボルボは今後日本での販売の半分がディーゼルになっていくと予想している。もっとも販売台数の多いCセグメントのV40はボルボのエコ戦略の象徴とも言える存在だ
今回はその燃費対策について、ハイブリッド、ディーゼル、小排気量ターボの3つの仕組みをざっくりと説明したいと思う。
過去20年、日本と欧州のエコカー戦略は異なる方向で進んできた。日本はプリウスの登場以来、エコカーとはほぼハイブリッドのことで、エンジンとモーターを効率良く補完させて燃費を稼いできた。一方、欧州のクルマはディーゼルと小排気量ターボがエコカーの主役となっていた。
それがここに来て相互に乗り入れを始めた。トヨタやホンダが小排気量ターボに乗り出し、マツダがディーゼルに注力する。一方、欧州のメーカーもプラグインハイブリッドに進出を図っている。2つに分かれていた相互の戦略が交わることになれば、今後は従来以上に直接対決が増えていくはずだ。
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