3つのエンジンから分析するエコカー戦線の現状:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/6 ページ)
今やクルマもエコがブームだ。世の中の環境に対する配慮というのはもちろんだが、利用者にとっても燃費の良いクルマに乗るのは決して悪いことではない。今回は各種エンジン技術を軸にしたエコカーの現状を解説する。
もう1つのメリットは、動力機関をその特性に応じて使い分けられる点にある。エンジンは低速に弱く高速に強い。マニュアルトランスミッションのクルマに慣れない人が乗ると発進時にエンストしてしまうのはそのためだ。ところがモーターはその特性上、発進時に最もトルクが出る。だから停止と発進を繰り返す都市内の渋滞路でとても高いエネルギー効率を発揮する。
しかし、モーターは高速域が苦手だ。モーターは高速回転すると電力効率が落ちる。加えて、バッテリーも一気にエネルギーを放出するのが苦手なのである。だから全開加速をするような場面ではモーターとバッテリー両方の特性で、効率が悪化してしまう。
そこで、発進を含む低速域をモーターで、高速域をエンジンで駆動できるトヨタ型のハイブリッドはとても有利になるのである。また、エンジンにトルクの痩せた回転域があったら、そこはモーターが補助するような仕組みにすることが可能だから、エンジンに万能性が求められない。それはコストダウンにも効いてくるし、そこを諦めることでほかの部分の性能向上を狙うこともできるのだ。
ハイブリッドは現在、プラグインハイブリッドにシフトしていくことが予想されている。インフラ電力はピーク以外にダブついている時間帯(主に夜間)がある。電力は発送電の過程で貯めておくのが難しいので、この余剰電力を使って、自動車に充電してやろうという考え方だ。また新興国を中心に増え続けている自動車の排気ガスによる環境の悪化に歯止めをかける意味もある。ただし、これらについては、原発を含むエネルギー政策の方向性によって左右される部分もあるので、自動車の側面からだけで解決できるとは限らない。
さて、ハイブリッドにも強みと弱みがある。強みはやはり渋滞路での効率の良さだろう。減速のたびにエネルギー回収をして、モーターの得意な停止からの加速で回収したエネルギーを効率良く使う。弱みは高速巡航だ。一定速度で走っていれば、エネルギーは回生するチャンスがない上、モーターを使うシーンもない。つまりただのガソリンエンジン車になってしまう。そして巡航中のクルマには、使われないモーターと大型バッテリーという重量物が積まれているのだ。
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