3つのエンジンから分析するエコカー戦線の現状:池田直渡「週刊モータージャーナル」(6/6 ページ)
今やクルマもエコがブームだ。世の中の環境に対する配慮というのはもちろんだが、利用者にとっても燃費の良いクルマに乗るのは決して悪いことではない。今回は各種エンジン技術を軸にしたエコカーの現状を解説する。
それぞれの課題
さて、3つの低燃費ユニットについて書いてきた。それぞれに一長一短がある。
ハイブリッドは市街地運転に非常に適した仕組みだ。本来は長距離移動に使わないBセグメントや5ナンバーミニバンにこそふさわしい。ところが、それらのクラスはコスト要求が厳しく、価格を折り合わせるのが難しい。一番の課題はそのコストになるだろう。
ディーゼルは比較的オールマイティだ。低速から高速まで不得意なところが少ない。ただしこれもコスト問題を抱えているので、今後どの程度コストダウンが進むかが課題だ。また上述の排ガス問題の一層のクリーン化がいままで以上に求められることは間違いない。そして、この排気ガスの後処理装置こそが高コストの大きな原因となっている。技術的なブレークスルーが待たれるところだ。
小排気量ターボは、高速巡航が多いユーザーには良い選択肢になるだろう。ただし、複雑な可変技術を重層的に積み上げた成り立ちから、コストと洗練性にまだまだ課題がある。正直にいえば、問題の多さで言えばナンバーワンだと言っていいだろう。ただそれだけに改善の余地があるとも言える。
低燃費技術の未来へ向けて、どのシステムもまだ発展途中にあるのである。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
関連記事
- 検証! 日本の自動車メーカーがやるべきこと
これまで数回にわたり日本の自動車メーカーの戦略を論じてきた。今回はその総括と、これから先に国産メーカーが進むべき道筋を考えたい。 - 新型プリウスはどうなる? 新戦略で転機を迎えるトヨタのハイブリッドシステム
世界一の自動車メーカーになるために、工場改革と自動車のモジュール化を進めるトヨタ。TNGA戦略のもう一つの鍵が、2015年中に14機種発表されるという新エンジンだ。 - 写真で見る新型ロードスターのメカニズム
4代目となるマツダ・ロードスターの発売が近づいている。車体剛性を向上させた上で、先代から約100キロもの驚異的な軽量化を実現した新型ロードスターはどのような作りになっているのか? その秘密をひもといていこう。 - トヨタの燃料電池自動車「MIRAI」の登場で、ガソリンエンジン車はなくなる?
夢の燃料電池車(FCV)――トヨタが発表した「MIRAI」は大きな話題となった。ありあまる水素を燃料にできるFCVは究極のエコカー。FCVが普及すれば、将来、ガソリンエンジン車は駆逐されるのだろうか? - 「週刊モータージャーナル」バックナンバー
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.