3Dプリンターで回路基板を製作、NY発のベンチャーが狙う日本市場:日米のビジネス事情の違いを知る(2/9 ページ)
米国でビジネスに力を入れる日本人起業家や、日本とのビジネスに興味を持つ外国人と対話する「アントレプレナー対談。日米のビジネス事情の違いを知る」。今回は、ニューヨーク発のハードウェアスタートアップ「BotFactory」のCEOをゲストに迎えました。
ニコラス: ええ。ここ5〜10年は、クラウドファンディングや3Dプリンターといった技術革新により、スタートアップでも大企業や既存の競合企業と、すぐに同じ地点に立てるようになりました。これは非常にありがたいことです。私たちはオリジナルの3Dプリンター(Squink)を作っていますが、そこに使われる製品のパーツは、既存の3Dプリンターで作っているわけです。そして自分たちで開発したマシン(Squink)で、今度はSquinkに必要な回路基板を作っている。
もちろん3Dプリンターがない時代でも、同じように回路基板の設計や、回路基板を作るためのマシンは開発できました。けれど、3Dプリンターの登場後とは比べ物にならないほどお金がかかりましたし、資金集めも大変でした。なおかつ、それらが本当に形になるか分からない、という怖さもありましたしね。
それに対して今は、3Dプリンターを使って速く安く作れるだけでなく、クラウドファンディングを通して自分たちのアイデアを簡単に世に出すことができます。たとえ完全な製品じゃないとしても、世の中にアイデアを投げかけることで、“自分たちのビジョンは受け入れられるのか”を問うことができるわけです。私たちは「電子部品を作り、速く安く家でモノづくりができるようにしたい!」と世の中にビジョンを提示し、実際それに対して「ああしたい、こうしたい」と思いを持ってくれた人たちがいたので、製品を出し会社を興すことができました。
もちろん資金面でもクラウドファンディングには助けられています。スタートアップを始めるには、資金集めは欠かせません。シリコンバレーの場合、投資家は「説得力のある物語=アイデア」を重視する傾向にあります。「あなたの物語は、世界を変えられるか」。ここに注目され、お金が集まるわけです。
一方のニューヨークは「数字」です。売り上げが増えれば投資家は入ってきますが、際立った「数字」がない限り、資金集めは難航します。実際にモノが完成し、売れてからじゃないと投資家の興味を引き出せないという意味では、これまではニューヨークでハードウェアスタートアップを始めるのは、難しかったと思います。クラウドファンディングが誕生したことで、この状況は大きく変わりましたね。
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