3Dプリンターで回路基板を製作、NY発のベンチャーが狙う日本市場:日米のビジネス事情の違いを知る(3/9 ページ)
米国でビジネスに力を入れる日本人起業家や、日本とのビジネスに興味を持つ外国人と対話する「アントレプレナー対談。日米のビジネス事情の違いを知る」。今回は、ニューヨーク発のハードウェアスタートアップ「BotFactory」のCEOをゲストに迎えました。
ニューヨーク大学技術工科大学院で出会った友人、教授らと創業
関: それはとても興味深い意見ですね。ところでニコラスさんは、どうしてSquinkという製品でスタートアップを立ち上げようと考えられたのですか?
ニコラス: それをお話する前に、少しだけ私のバックグラウンドを説明させていただきます。私は出身国であるベルギーでロボット工学を学び、電気機械工学の修士を取ってから、2つめの修士を取りに米国に来ました。米国では、ニューヨーク大学(NYU)の技術工科大学院に入り、ワイヤレスコミュニケーションを専攻しました。学生時代からたくさんの電子部品を作ってきたのですが、いつも課題としてあったのが、“手戻りの多さ”。
電子回路は、設計がうまくいっていないと予測に反する動作をするものなので、失敗すると、部品を再注文せざるを得ないこともあります。そして到着を待ち、また間違えてしまうと、部品の再注文や設計のやり直しなどの工程が発生します。こうした作業に時間を取られ、開発サイクルが長くなってしまうのが問題だと感じていました。
そんな時、NYUで共同創業者のカール(CTOのCarlos Ospina Tarazona氏)と出会いました。カールは、あるプロジェクトで同じチームになったクラスメートです。そのクラスには8つのチームがあり、皆で同じものをデザインしようという課題が与えられました。この時、私とカールは「基板をなるべくシンプルにしよう」と決めたのです。シンプルな基板(汎用的なパーツを多用すること)は、小型化しにくいというデメリットがある一方、万が一何か問題が発生した時でも、わざわざ部品を調達し直すことなく、自分たちで“ハック”し調整可能というメリットがあります。そうして2カ月かけて設計の仕方を学びながら、電子回路を作っていきました。
その結果、どのチームも必ず何かしらの間違いを犯し、うまく動作しないために電子部品の再発注を繰り返していました。対して私たちは、汎用的な部品を多用したので、見た目は非常に汚らしくなりましたけれど、なんとか動かすことはできました。電子部品の再発注を繰り返しているチームの中には、到着が間に合わず、課題の締め切りを過ぎてしまったところもありました。
この時の経験が、私たちのビジネスの基盤になりました。その後、3人目の共同創業者としてNYUの教授(Michael Knox氏)に加わってもらい、彼と非常に長い間ブレインストーミングをし、より具体的なイメージへと発展させていったのです。
関連記事
- アップルやマクドナルドは、本当に“悪の帝国”なのか?
弱体化する国家を尻目に、国境を気にせず自らの利益を追い求める“企業帝国”たち。世界が一握りのお金持ちと圧倒的多数の単純労働者に分かれていくなかで、人々が幸せになる方法はあるのか。小飼弾さんと松井博さんが語り合った。 - 生産台数9000万台超! ホンダのスーパーカブがスゴい
世界中で販売されているスーパーカブ(ホンダ)の累計生産台数が9000万台を超え、あと数年で1億台を突破しそうだ。50年以上前に発売されたスーパーカブは、なぜ今でも売れ続けているのだろうか。ホンダの広報部に聞いた。 - 値段は競合の2倍――それでもカシオの電卓がインドで売れる、2つの理由
1980年代からインドで電卓を販売していたが、値段が高いため知名度の割に売れていなかったカシオ。しかし2010年発売の新商品が大ヒット、以来インドでの売れ行きはずっと好調だという。高くても売れる、その秘密とは? - 米国で盛り上がっている、コンベンションビジネス最新事情
展示会などを行うコンベンションビジネスが、いま米国で盛り上がっている。周辺にはホテルやアウトレットモールなどが建設され、地元経済を活性化する起爆剤になっているのだ。そんなドル箱ともいえるコンベンションビジネスの最新事情を紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.