3Dプリンターで回路基板を製作、NY発のベンチャーが狙う日本市場:日米のビジネス事情の違いを知る(5/9 ページ)
米国でビジネスに力を入れる日本人起業家や、日本とのビジネスに興味を持つ外国人と対話する「アントレプレナー対談。日米のビジネス事情の違いを知る」。今回は、ニューヨーク発のハードウェアスタートアップ「BotFactory」のCEOをゲストに迎えました。
「ちゃんと動く電子回路」をダウンロードできれば
関: すでに出荷済みのマシンもあるんですよね?
ニコラス: はい、2015年6月に出荷を開始し、今のところ7台出しました(2015年7月6日現在)。
関: これまでに購入された企業や個人、興味を示している人はどの程度いるのでしょうか?
ニコラス: すでに25台を販売済みで、それに加え、75社が興味を示しています。私たちは初め、顧客の中心は私たちと同じような“モノづくりをする個人”になるだろうと考えていました。ところが、1台3000ドルという価格帯のためか、グーグルやP&Gといった大企業からスタートアップまで、多くの企業から関心が寄せられています。企業の利用目的は大きく2つあります。1つは、会社の中に「メーカースペース」というモノづくり空間を作りたいからという理由。もう1つは、プロトタイプ製作をする企業のエンジニアが使いたいというニーズです。企業に限らず、学校も興味を持ってくれています。
Squinkは、写真用紙やガラスなど、特定の材質の上にも導電性インクで回路を印刷していくことができる製品で、折り曲げ可能な柔軟な基板(以下、「フレキシブル回路基板」)にも対応します。これにより、手首に巻くなどのウェアラブル製品にも利用できると、興味を示している顧客もいるようです。私たちは、ドローンのように軽量化が求められる製品にも適していると考えています。
関: 私がSquinkで気に入っているのは、すでに存在している設計図を参考に、電子回路をカスタマイズできるところです。そのアイデアはお客さんの要望から生まれたものなのでしょうか? それとも社内で考えついたものですか?
ニコラス: アイデアをどうやって思いついたのかは覚えていないんですけれど、社員全員が同じことを考えていましたね。既存の設計図をオンライン上に置いておけば、誰かがそれをダウンロードして、同じように作ることができるだろうと。3Dプリンターでモノを作る場合は適切にデザインさえすれば、3Dプリンティングすることはできますが、電子回路の場合は、なかなかそうはいきません。「ちゃんと動く電子回路」である必要があります。
ですから「ちゃんと動く電子回路」をダウンロードして使うことができれば、ユーザーにとっても大きなアドバンテージになるだろうと考えましたし、実際その通りでした。お客さんにもそのアイデアを話したところ、まさにそれが望まれていたものだと分かりましたしね。
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