国連職員からノンフィクション作家へ――川内有緒さんインタビュー(後編):人を描くことで見えてくるもの(2/3 ページ)
国連職員からノンフィクション作家へ。一見突拍子もない「転職」に見えるが、それまでの仕事の経験と時間が、彼女の「新たな夢」の後押しとなった。
――一方で、作家さんというと余計、生活面……お金はどうやりくりしていらっしゃるんだろうとか、現実的なところも気になってしまうのですが。
収入の波はすごくありますが、苦しいというほどではないですね。確かに、3カ月くらい全然お金が入ってこない、でも印税とか原稿料とかくるときはどかんとくる、っていう生活ではあるので、性格的に細かい方には向かないかもしれません。ただ、私は幸いそういうのが気にならないタイプ。
新田次郎文学賞の授賞式では、阿刀田高さんに「ノンフィクションやっていくんだったら、もう茨の道だね、貧乏への扉が開いたね」と言われましたが(笑)、私は「いざとなれば何でもやればいいや」と思っているので。今も、作家業の他にも、ギャラリースペースの運営やイベントの企画、前からのつながりでリサーチの仕事も引き受けています。
そんな風に、やろうと思えばいくらでも食べていく道はあるのかな、という気持ちの余裕だけは常にあって。
――旦那様もライターさんですよね。
だから、変に安心しちゃうのかも。彼は私よりよっぽどポジティブで、適当に生きている(笑)。毎日のように締め切りを抱えていて、仕事もほとんど断らないし、そこは私と正反対なのですが。
国連という組織を辞めたことで、生活にこまごまとした不満はあるけれど、そういうのは挙げてったらきりがないからあまり考えていなくて。トータルで見るといまのほうが断然良い、本当にハッピーだと心から言えますね。
国連職員からノンフィクション作家へ。一見突拍子もない「転職」に見えるが、川内さんのお話を伺っていると、それが人生の中で確かな地続きになっているのだと納得させられる。それまでの仕事での経験、かけた時間は、「新たな夢」の後押しになることもあるのだ。
では、そんな川内さんはいまどんな仕事を手掛けていらっしゃるのか。
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