信州特急「あずさ」に新車が入ると伊豆特急「踊り子」が快適に?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/4 ページ)
新型電車の登場は明るい話題としてニュースになる。新しいデザインは未来を感じさせてくれるし、新しい技術はスピードと快適な乗り心地を予感させる。でも、鉄道ファンは新型を歓迎するだけではなく、旧型の行方も気になってしまう。
押し出されるE351系とE257系の行方
JR東日本はE353系の営業運転時期や量産車の導入時期を明らかにしていない。これは量産先行車の試験結果にかかわるから、まだ決められない。稀少な例とはいえ、量産先行車を作って量産しなかった例もある。京葉線向けに作られたE331系だ。連結された車体の間に1つの台車を置く"連接方式"というユニークな構造だったけれど、量産化に至らず廃車となっている。運行休止も含めて7年間も試験運転した後の不採用だった。
E353系が予定通りに量産化されたあかつきには、まずスーパーあずさ8往復に投入される。スーパーあずさは新宿〜松本・南小谷間の特急「あずさ」の速達型列車だ。また、一部報道ではJR東日本のコメントとしてあずさ、「かいじ」全車両をE353系に置き変える方針と伝えた。停車駅の多いあずさと、新宿〜甲府間の特急かいじは、振り子方式を採用しない「E257系」が使われている。
そうなると、鉄道ファンとしては新車導入の情報だけでは満足できない。E353系に押し出されるE351系とE257系の動向も気になる。E351系は1993年の運行開始から22年。そろそろ第一線を退く時期とは言え、まだ使えそうだ。E257系は2001年の運行開始から14年しか経っていない。特急列車の新車入れ替えはダイヤ改正を機に一斉に行われる場合もあるし、2年以上かけて徐々に行う場合もある。いずれにしても、E353系の導入によって、まだまだ使えるE351系とE357系が押し出される。
E351系については、団体列車、臨時列車として使うという。電車の減価償却期間は13年。20年を過ぎれば定期列車を引退してもいい頃合いだ。製造数も少なく、8両編成が5本。増結用の4両編成も5本。他の路線の定期列車を置き変えられる数ではない。JR東日本の直流特急電車は中央本線、伊豆方面、房総方面、高崎方面で、伊豆方面の特急「踊り子」は運行本数が多くE351系だけでは足りない。房総方面はE351系より新しいE257系を導入済み、しかも高速バスとの競争が激しく減便傾向である。高崎方面の特急「あかぎ」は常磐線で活躍したE651系が改造の上で投入されたばかりだ。E351系を定期列車に転用する機会はなさそうである。
E257系は伊豆行き特急踊り子に転属する方針が報じられている。中央本線向けE257系は9両編成が16本。増結用の2両編成が5本。大所帯だ。踊り子は定期列車こそ3往復だけど、週末は臨時列車含めて8往復も走る。そこで、かいじで使ったE257系を踊り子に投入し、現在使われている185系電車と交代させる算段らしい。
中央本線の特急あずさ、かいじがすべてE353系になると、それまで使っていたE257系が踊り子に転用される。その結果、伊豆方面の旅が快適になるというわけだ。
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