「寝台特急北斗星を残して」と第3セクターの叫び 気持ちは分かるが“筋違い”:杉山淳一の時事日想(1/4 ページ)
2015年1月13日、北海道、青森県、岩手県の第3セクター鉄道担当者がJR北海道本社を訪れ、寝台特急「北斗星」「カシオペア」の運行継続を要望した。理由は道県内や沿線の利用客の不便ではなく、JRからの運行収入が減っては困るからだ。経営危機に瀕した行動だと理解できるが同情できない。むしろ並行在来線問題の本質的解決のために行動すべきだ。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP。
「上野〜札幌間の寝台特急が廃止されると、青森県と岩手県が困る」というのは、事情を知らない人にとっては因果関係を理解できないし、事情を知ってもやっぱり理解できない。「風が吹けば桶屋が儲かる」の逆で、「風が止まれば桶屋が潰れる」くらい難しい。
今回の場合「風」は寝台特急で、「桶屋」は青森県と岩手県だ。その因果関係として、並行在来線を運営する第3セクター鉄道がある。風が吹けば桶屋が儲かるに例えると、「寝台特急が通過すれば運行会社のJRから第3セクター鉄道に線路使用料が支払われ、第3セクターと線路施設を保有する自治体が儲かる」ということだ。
その風役の寝台特急は消えゆく運命である。JRグループは3月のダイヤ改正で上野〜札幌間の寝台特急「北斗星」の定期運行を廃止し、8月までは臨時列車として継続する。同区間のハイグレード版「カシオペア」は例年通りほぼ隔日運行で継続の見込みだ。しかし、北海道新幹線が青函トンネルを走るようになると廃止という情勢だ。
風が止んでしまうと、桶屋は儲からない。北斗星の場合、2013年度にJR東日本から青森県に支払われた線路使用料は約3億8800万円(参考リンク)。IGRいわて銀河鉄道の数字は報じられていないようだ。青い森鉄道の路線距離で比較換算すると、IGRいわて銀河鉄道は約2億6000万円とみられる。これらの数値は両社の営業収益の約2割となり、北斗星が完全に廃止となれば減収になる。そして経営危機に陥るというわけだ。
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