超電導リニアを試乗「たいしたことない」、だからスゴい:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/3 ページ)
JR東海は2014年度から超電導リニアの体験試乗会を開催している。たいそうな競争率のようで、何度か応募しつつも落選したけれど、この夏、やっと当選したので乗ってみた。意外にも新鮮な感動はなかった。新幹線と同じ乗り心地。ただし、それが時速500キロメートルで走行中ということを忘れてはいけない。
旅客機並みの加速感と、新幹線並みの静けさ
もしあなたが体験試乗会に参加して「たいしたことないな」と思ったら、それは大きな賛辞である。あなたはそれに気付かないかもしれないけれど。
走行中の加速感と安定感について、特筆すべき感動はなかった。加速は新幹線に比べて強めのG(重力)を感じる。発車後、約30秒で時速100キロメートルに達した。参考までに、東海道新幹線「のぞみ」が新大阪駅を発車して時速100キロメートルに到達するまでは約150秒かかる。のぞみの場合は分岐器や曲線の通過、市街地走行区間で多少の速度制限があるかもしれないから、参考数値だけど、それにしてもL0系の加速はスゴい。しかもこの速度ではまだ浮上していない。
ちなみに、のぞみは大阪から京都に着くまでに時速285キロメートルを出す。所要時間は約370秒。L0系は79秒で時速285キロメートルに達し、さらに加速して約146秒後に時速500キロメートルに達した。数字の上ではかなりの加速性能だけど、体験してみると、新幹線よりちょっとだけ強めのGにとどまる。そして旅客機の離陸に比べるとGは小さい気がする。
L0系の走行中の揺れ具合もN700系「のぞみ」と変わらない。これは意外だった。浮上走行のL0系は、もっとふわふわした、滑らかな乗り心地だと思っていたけれど、小刻みな揺れがある。L0系は浮上走行時も空力と戦って小刻みにバランスを取っているようだ。しかし、逆にN700系の揺れの少なさの方が優秀と言える。レールに乗った安定感とアクティブエアサスペンションの勝利だ。
こんな風に書くと、L0系はたいしたことはないな、と思うかもしれない。しかし、この「たいしたことがない」ことがスゴいのだ。何しろL0系は時速500キロメートルで走っている。新幹線とほぼ同じ乗り心地で時速500キロメートル。しかも旅客機のようなシートベルトはいらない。体験試乗会は車内で飲食禁止だったけれど、もし時速500キロメートルで走行中に車内販売のお姉さんがやってきて、カップにホットコーヒーを注いだって違和感がない。くどいようだけど、地上で時速500キロメートルにもかかわらず、だ。
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