東京〜大阪間を3分短縮! 新幹線の高速化に挑み続けるJR東海:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/5 ページ)
2015年3月のJRグループダイヤ改正で、東海道新幹線の最高速度は時速285キロメートルに引き上げられ、東京〜新大阪間の所要時間は3分短縮した。たった3分だけど、この数字には大きな意味があるのだ。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP。
明治5年に日本で初めて鉄道が開業した10年後に、新橋〜横浜間で急行運転が行われている。1日2往復、途中3駅を通過して、所要時間は各駅停車より10分も速かった。それから133年、日本の鉄道は速度向上を追求している。誰にでも平等な「時間」という資源を大切に考えていると言える。
2015年3月、北陸新幹線開業と同じ日、東海道新幹線は時速285キロメートルの運行を始めた。東京〜大阪間の所要時間は3分も短縮された。北陸新幹線が北陸と東京を短縮した1時間に比べれば、東海道新幹線の3分短縮は些細な話だ。
しかし、東海道新幹線のスピードアップの歴史は、小さなスピードアップの積み重ねである。東海道新幹線の開業時に最速列車だった「ひかり」の東京〜大阪間の所要時間は4時間だった。営業運転列車の最高速度は時速160キロメートル。そして現在の最速列車「のぞみ」による所要時間は2時間22分。最高速度は時速285キロメートルに到達した。東海道新幹線は開業から半世紀かけて、所要時間を1時間38分も短縮し、最高時速を125キロメートルも上昇させた。ルートを変更するような大規模工事もなく、線路の改良と車両の改良でこれだけのスピードアップを図っている。今年の3分短縮は、開業時から現在までに行われた「1時間38分短縮」の総仕上げだ。
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