NASAから新興宇宙ベンチャーまで テキサスは米国の宇宙史だ:宇宙ビジネスの新潮流(1/2 ページ)
古くから米国の航空宇宙産業の中心的な担い手だったテキサス州が、新たなステージに突入しようとしている。SpaceXなどの宇宙ビジネスベンチャーが集結しているのだ。
カリフォルニア、シアトルに並ぶ宇宙産業都市
前回、米国西海岸のシアトルが宇宙ビジネスの最前線にあることを紹介した。今回はシアトルと並び注目を集めるテキサスの動向をお伝えしたい。
米国南部に位置するテキサス州は、全米2位の人口約2500万人を抱える大きな州であり、ダルビッシュ有投手が所属していることで日本人にも馴染み深いメジャーリーグのテキサス・レンジャース、バスケットボールのヒューストン・ロケッツ、アメリカンフットボールのダラス・カウボーイズなど、有力プロスポーツチームが多数存在していることでも有名だ。
また、テキサス州は全米を代表する産業地域でもあり、Fortune 500企業のうち、50を超える企業が本社を構えている。その中には米ExxonMobilや米Philipps 66などの大手エネルギー企業、航空大手の米American Airline、通信大手の米AT&T、半導体大手の米Texas Instrumentsなどもある。また州別の輸出額ランキングでも10年以上にわたり全米1位を維持している。
航空宇宙産業もテキサス州の代表的な産業の1つだ。米国労働省労働統計局が発表した2014年の統計では、航空宇宙産業に従事する技術者数において、州単位では1位のカリフォルニア州、2位のワシントン州に次ぐ全米3位の規模を誇っており、航空宇宙関連企業の数も100前後に及ぶ。
NASAとともに発展してきた歴史
長年にわたってテキサス州の航空宇宙産業の歴史の中心にいたのがNASA(米航空宇宙局)のジョンソン宇宙センター(JSC)だ。1961年に有人宇宙船センターとして開設された同拠点は、1973年に同州出身の大統領であるリンドン・B・ジョンソン氏にちなんで現在の名称に改名。有人宇宙飛行のジェミニ計画、有人月探査のアポロ計画、宇宙ステーションのスカイラブ計画など、人類史に残る宇宙開発プロジェクトをリードしてきた。
その後はスペースシャトルプログラムをリードし、スペースシャトル退役後の現在も100人を超える宇宙飛行士が在籍。正社員および契約・協力社員で計1万5000人がJSCの関連施設で働いている。今もなおISS(国際宇宙ステーション)の運用やミッションコントロール、および数多くの有人宇宙飛行プロジェクトの中心地として重要な役割を担い続けている。
こうしたJSCの各プロジェクトからの受託や再委託を受ける形で、航空宇宙関連企業が集積し、発展してきたのがテキサス州の航空宇宙産業なのである。州政府も航空宇宙産業を支援するために2003年に州知事付きの航空宇宙局(Governer's Office of Aerospace and Aviation)を設置し、企業誘致を目的とする「Texas Enterprise Fund」や技術実用化を目的とする「Emerging Technology Fund」を立ち上げるなど、さまざまな施策を行っている。
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