NASAから新興宇宙ベンチャーまで テキサスは米国の宇宙史だ:宇宙ビジネスの新潮流(2/2 ページ)
古くから米国の航空宇宙産業の中心的な担い手だったテキサス州が、新たなステージに突入しようとしている。SpaceXなどの宇宙ビジネスベンチャーが集結しているのだ。
SpaceXはロケット発射場を建設中
こうした取り組みの成果もあり、テキサス州は従来のJSCを中心とした航空宇宙産業の集積地に加えて、近年は商業宇宙打ち上げ・飛行を手掛ける宇宙ベンチャー企業の集積地にもなりつつあるのだ。具体的には米SpaceX、米XCOR Aerospace、米Blue Origin、米Firefly Space Systemsなど、ロケットや宇宙船など宇宙への輸送手段を提供する企業たちが、発射場や開発拠点、施設を構えている。
ロケット製造・打ち上げのSpaceXは、テキサス州のブラウンズビル近郊のボカチカビーチ東側に新たなロケット発射場を建設中だ。2014年から建設に着手しており、2016年度後半の運用開始を見込んでいる。現在打ち上げに活用しているフロリダ州のケープカナベラル空軍基地より緯度が低いため、地球の自転遠心力の活用と燃料節約の観点からからより適した発射場として期待されている。
準軌道(サブオービタル)への有人宇宙船およびロケット「ニューシェパード」を開発するBlueOriginは、テキサス州に開発拠点を持っており、2015年4月には同州で初の開発試験飛行を行った。
スペースプレーンと呼ばれる有人宇宙船の開発を進めるXCOR Aerospaceは、テキサス州のミッドランドに本社を構えており、FAA(連邦航空局)がミッドランド国際空港での商業宇宙飛行を認証したことで、将来的には同空港の活用を目指している。
自治体も宇宙ベンチャーを支援
一方で、こうした宇宙ベンチャーを誘致しようと、自治体も積極的に取り組んでいる。XCOR Aerospaceが拠点を構えるミッドランドでは、試験施設や関連設備などの事業インフラを提供するための「Midland Spaceport Business Park」を建設中だ。また、ミッドランドにおける雇用機会を一定程度拡大した企業や一定額の投資を行った企業への特別なローンプログラムの提供なども行っている。
先月シリコンバレーで開催された宇宙ビジネス関連イベント「NewSpace Conference 2015」(関連記事)に登壇した米Midland Development Corporationのエグゼクティブディレクターであるパメラ・ウェルチ氏は、ミッドランドへの移転企業が享受できる具体的なメリットとして「既存の航空宇宙関連企業や施設が豊富である」「近辺にアウトソースできる企業が多い」「テキサス大学による関連分野の人材育成がある」などを挙げていた。
これまでの米国の宇宙産業をけん引し、今後も宇宙ビジネスの中心的な担い手として期待されるテキサスの動向を注視したい。
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