ソニー「若返り戦略」の不安と期待(3/4 ページ)
ソニーがハイレゾ対応のウォークマンの新モデルとヘッドホンの新シリーズを発表した。若者層を中心ターゲットとしたその戦略に筆者は不安と期待を持っている。それは……。
ソニーは「ニーズ創出」できるのか?
ニーズがないなら作り出せばいい。顕在ニーズばかり追っていてはすぐに競合との泥仕合になる。自らニーズ喚起することが重要だ。その際、ターゲットとその喚起策がうまく整合するかが成否を分けるといえる。
若年層というターゲットと、施策である4Pの整合性を検証したい。
Product(製品)の特徴はそもそもの「音がいい」ということ以外には、前述の通り鮮やかな色とバリエーションが挙げられるが、製品の価値で考えれば「音がいい」が対価を払う意味としての「中核的価値」だとすれば、色とバリエーションは中核価値とは直接関係ないが、あると価値が高まる要素である「付随機能」である。ハイレゾでないプレイヤーやヘッドホンでもカラバリ展開をしている商品もあるし、それだけで買いたいと思わせるのは難しい。ここは、プロモーションなど、他の3つのPの要素と合わせ技で、本来の「音がいい」という中核価値、それを実現している「ハイレゾ機器」という「実体価値」を魅力に感じさせることが欠かせない。
Price(価格)は16GBモデルがソニーストアで2万7800円(税別)。音質はともかく、ザイズ感的にアップルのiPod nanoを同等クラスとするなら、アップルストアで同じく16GBが1万7800円(税別)なので1万円の差は大きい。ただし、ウォークマンAシリーズにはノイズキャンセリング機能付きイヤホンが同梱されており、それで電車の中など屋外のどこでも高音質が楽しめるという点が売りの1つになっている。ノイズキャンセリングイヤホンの市場価格はカカクコムで見れば、おおよそ5000〜1万円。それを加えても同等か少し割高なので、ハイレゾのエントリーモデルとしてはもう少し手軽な価格を実現したいところといえるかもしれない。
Place(販売場所)は普通に家電量販店などが中心になると思われるが、家電量販店の中心顧客は中高年だ。とすれば、若年層を狙うなら例えばセレクトショップや雑貨店などとタイアップするなど、ターゲットに合わせたチャネル界初も平行して行いたいところだ。
Promotion(販売促進)は、キャンペーンサイトに掲載されているように、モデルの松岡、モデル・フリースタイルバスケットボーラーのZiNEZ、俳優・映画監督・ミュージシャンのDEAN FUJIOKA、ダンサー・振付師の仲宗根梨乃という4人の若年層から支持の高いキャラクターが集められ、商品の魅力である「圧縮しない快感」を語っている。彼らにインスパイアされるような広告などで注目を集め、興味・関心を高めることができるかが最初のハードルだろう。
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