破たん前と破たん後で何が違うのか JALの金銭感覚:水曜インタビュー劇場(JAL公演)(2/5 ページ)
2010年1月、JALが破たんした。訪日外国人客の増加などの影響を受け、直近の決算は絶好調だが、破たん前、社内はどのような状況だったのか。当時の状況を詳しく知る、同社・人財本部の野村直史部長に話を聞いた。
採算意識が高まる
土肥: 野村さんの話を聞いて、「だから破たんしたんだ!」と感じた読者も多いかもしれません。
野村: だと思います。企業は利益をあげて存続しなければいけません。これは大前提ですよね。民間企業で働いている人であれば、何の疑問も抱かないはず。JALでは「公共交通機関の一端〜〜」「社会的意義〜〜」といった雰囲気がありましたが、そんなものは会社が存在しなければ何の意味もありません。会社がなくなってしまえば、たくさんの人に迷惑をかけるだけですから。企業はきちんと利益をあげ続けなければいけない――そんな基本のきに気付いていませんでした。
多くの社員は「会社の利益をあげるのは営業の仕事でしょ?」とどこか他人事として受け止めていたのですが、これではいけません。破たん後は、パイロットも客室乗務員も整備士も……自分たちが会社の利益をあげるために何ができるのかといったことを考え始めました。
土肥: 例えば?
野村: 効率を考えて、着陸後の地上滑走時に片側のエンジンを切るようにしました。もちろん無理のない範囲で切っています。こうした小さな取り組みの積み重ねで、燃料を節約できるだけでなく、二酸化炭素の排出量をかなり削減できるようになりました。
破たん後は、できるだけ燃料を使わないような高度を飛ぼう、飛行計画にしよう、という意識も生まれてきました。もちろん、ここでも安全を最優先させています。お客さまの快適性、定時性を損なわない範囲で行っています。
客室乗務員の場合はどうか。会社の利益に貢献するために、機内販売をしっかりやるようになりました。
土肥: 整備士はどうでしょうか? 利益をあげる職種ではないですよね。
野村: できるだけ効率よく仕事をするようになりました。例えば、飛行機の格納庫の中には、棚があってそこにはたくさんの部品があります。整備士はそこから必要な部品を手に取って、整備を行います。破たん後は、採算意識を強くするために、ひとつひとつの部品に価格を貼るようにしたんですよ。「このネジは、1つ○○円」「この布は、1つ○○円」といった感じで。そうすると「この部品はこんなに高いんだ」となって、コスト意識が高まる。破たん前は一度使ったら捨てていたモノだったのに、価格を知ることで「もう一度使おう」「できるだけ長く使おう」という意識になって、整備部品や工具を大切に使うようになりました。
土肥: ふむふむ。
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