破たん前と破たん後で何が違うのか JALの金銭感覚:水曜インタビュー劇場(JAL公演)(3/5 ページ)
2010年1月、JALが破たんした。訪日外国人客の増加などの影響を受け、直近の決算は絶好調だが、破たん前、社内はどのような状況だったのか。当時の状況を詳しく知る、同社・人財本部の野村直史部長に話を聞いた。
部門別採算制度を導入
野村: コスト意識を高めるために、破たん後は部門別採算制度を取り入れました。いわゆる“アメーバ経営”ですね。各職場にこの制度が入っていって、今はひとりひとりに経営感覚が芽生えてきているのかなあと感じています。
――アメーバ経営とは、京セラ創業者の稲盛さんが会社を経営していく中で、編み出した経営手法。大きくなった組織を「アメーバ」と呼ばれる小集団に分けて独立採算することで、現場のひとりひとりが採算を考え、自主的に経営に参加する仕組み。
野村: 採算意識が希薄だったのは、専門職だけでなく、地上職も同じ。会社の利益に対する関心は、それほど高くはなかったですね。決算が発表されても「今年度は黒字だったね、よかったよかった」「今年度は赤字だったね、どんまいどんまい」といった感じで、どこか他人事だったんですよ。
土肥: 当事者が集まっているのではなく、評論家の集団のようですね。
野村: ですね。しかし部門別採算制度が導入されたことで、数字が身近なものになりました。「自分たちの部署は儲かっているのか」「自分たちの課の収支はどうなっているのか」「自分が所属しているグループのコストは、どのくらいかかったのか」といった具合に。見える化されたので、数字に関心が高まってきているのではないでしょうか。
繰り返しになりますが、破たん前は決算の数字を見ても「今年度は赤字だった、どんまいどんまい」と、まるで“よそさま”のこととして受け止めていました。しかし、破たん後は、ちょっと効率的に働くと数字が変わってくるので、決算書を見ても「今年度の利益はこのくらいか。そのうち自分たちはこのくらい貢献できたのか」という意識が芽生えてきたかなあと。
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