破たん前と破たん後で何が違うのか JALの金銭感覚:水曜インタビュー劇場(JAL公演)(5/5 ページ)
2010年1月、JALが破たんした。訪日外国人客の増加などの影響を受け、直近の決算は絶好調だが、破たん前、社内はどのような状況だったのか。当時の状況を詳しく知る、同社・人財本部の野村直史部長に話を聞いた。
全員が同じ目標に進む
土肥: 破たん後、さまざまなバッシングを受けていましたが、飛行機はきちんと飛んで、目的地に着いていました。
野村: 破たん前も破たん後も、自分がやらなければいけない仕事はきちんとやっているんです。ただ、前回もお話したとおり、破たん前の企業文化は「縦割り」。隣の部署の人たちがどんな仕事をしているのか分からない状況でした。全員が同じ目標に向かって進んでいなかったので、トータルとしてのアウトプットがダメでした。全員が同じ目標に進んでいけば、トータルのアウトプットが大きく違ってくるのではないでしょうか。
土肥: 破たん前は、1+1=0.8だったけれども、破たん後は1+1=2、1+1=3になるような?
野村: はい。破たん前、JALの社員は極悪人で、破たん後は善人になったという話ではありません。やっていることはほとんど変わっていませんが、みんなの考え方を合わせるだけでお互いの理解が進み、さまざまなことが変わってきたのではないか。個人的にそう思っています。
土肥: 同じ目標に向かって進もうとされているわけですが、ゴールは見えてきたのでしょうか?
野村: どこかのタイミングで「達成できました!」といったものではありません。永遠に目指していかなければいけないものではないでしょうか。追い続けることに難しさがあるので、これからもたくさんの壁があるはず。しかし、企業が存続していくためには、何度も何度も立ちはだかる壁を乗り越えていかなければいけません。
土肥: 最後におさらいさせてください。破たん前のJALは「隣の席に座っている人が何をしているのかよく分からない」という状況でした。経営悪化のニュースが伝えられても、「それは自分たちのせいではない。経営陣が悪い。営業が悪い」といった感じで、他人のせいにする雰囲気が漂っていたそうですね。。そして、儲かっていない鉄道の廃線が次々に決まっても、「自分たちは違う。誰かが守ってくれるはずだ」といった考えを持っていた人が多かった。
野村さんからこのような話を聞かせていただいて、「自分たちの会社も、破たん前のJALと似ている部分がある」と受け止めることが大切だと思うんですよ。縦割りの組織に、横串を刺せていない会社ってたくさんありますからね。もし「だからJALはダメになったんだ」と受け止めていれば、同じような道を歩むかも……(怖)。
本日はありがとうございました。
(終わり)
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