転職に成功する人、失敗する人――どこに“違い”があるのか:新連載・金曜インタビュー劇場(藤原和博さん)(2/5 ページ)
景気の影響を受けて、転職の求人数は右肩上がり。「自分もそろそろ……」と思っている人もいるだろうが、“転職で成功する人、失敗する人”にはどのような“違い”があるのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。
正解主義から逃れられない
土肥: まず「転職」をテーマに話を聞かせてください。総務省の調査によると、現在働いている人のうち「転職をしたいなあ」という人は1割ほど。居酒屋などで酔っ払った勢いで「オレは、明日辞表を提出してやるー!」と“管を巻いて”いらっしゃる方たちを含めると、かなりの割合に達するのではないでしょうか。
景気の影響もあって、現在は転職希望者にとってフォローの風が吹いているようです。転職サイト「DODA」が行った調査によると、求人数は右肩上がり。調査を開始した2008年1月以降、最高値を更新しているので、「おっ、それはチャンス! オレもそろそろ転職するか」と思うのは、早合点だと思うんですよ。読者のみなさんの周囲にも「転職で成功した人」「転職で失敗した人」がいると思うのですが、その“違い”はどこにあると思われますか?
藤原: ここ20〜30年で、消費社会が高度化してきました。どういうことか? 自分は消費者だという感覚がこびりついていて、「正しい選択をしなければいけない」という意識が強くなってきているのではないでしょうか。例えば、スーパーでレタスを買った。でもその商品に虫が付いていたら「ワー! ワー!」と文句を言って、店長から「正しいレタス」をもらって納得する。
学校の現場でもそうですよね。試験のときに、4択の問題が出される。例えば『走れメロス』で、主人公は帰り道にどんなことを考えていましたか? という問題が出されて、答えを4択の中から選ぶ。こうした問題を1000問、2000問、3000問……と解いているうちに、どういった人が育つのか。他人が4つの仮説を与えてくれる、その仮説の中に正解が必ずある――こうした感覚を持っている人が多いのではないでしょうか。
もちろん、なかには「自分は違う」と思っている人もいるでしょう。でも日本の教育界は長年「正解主義」を採用してきたので、大人になっても影響を受けている人が多いんです。ビジネスの世界では「正解がない」問題に直面することがあるかと思いますが、そうしたときでも正解を見つけようとしてしまう。また、自分の人生においても「正解はどれか」と考える。学校の先生から正解はどれでしょう? と教わってから、何年、何十年経っても正解を見つけようとする習性が続いているのではないでしょうか。
関連記事
- なぜ、あの人は「稼ぐ力」があるのか? 1万分の1の存在になる方法
「稼ぐ力」というフレーズが注目されているが、どうすればいいのかなあと感じている人も多いのでは。リクルートでフェローとして活躍し、その後中学校の校長を務めた藤原和博さんに“稼ぐ方法”について聞いてきた。 - ジャポニカ学習帳の表紙から「昆虫」が消えた、本当の理由
ジャポニカ学習帳の表紙といえば、「昆虫」の写真を思い浮かべる人も多いだろうが、数年前に昆虫が消えた。教師や保護者から「昆虫が気持ち悪いから変えてほしい」といった要望があって、発売元のショウワノートが削除したというが、本当にそうなのか? - 日本人のここがズレている! このままでは「観光立国」になれません
「訪日客が1300万人を突破」といったニュースを目にすると、「日本は観光立国になったなあ」と思われる人もいるだろうが、本当にそうなのか。文化財を修繕する小西美術工藝社のアトキンソン社長は「日本は『観光後進国』だ」と指摘する。その意味とは……。 - なぜ小さな会社が、“かつてないトースター”をつくることができたのか
バルミューダがこれまでになかったトースターを開発した。最大の特徴は、表面はさっくり焼けて香ばしく、内部は水分をしっかりと閉じ込めてふわふわ。そんな食感を楽しむことができるトースターを、なぜ従業員50人の会社がつくれたのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.