「高橋新監督」誕生の裏に、巨人の事情:赤坂8丁目発 スポーツ246(1/3 ページ)
巨人・高橋由伸監督が誕生した。目まぐるしいスピードで実現した“Gの政権交代”だったが、なぜ球団は高橋に「監督」を打診したのか。その理由は……。
臼北信行(うすきた・のぶゆき)氏のプロフィール:
国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。
野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2013年第3回まで全大会)やサッカーW杯(1998年・フランス、2002年・日韓共催、2006年・ドイツ)、五輪(2004年アテネ、2008年北京)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。
巨人・高橋由伸監督が誕生した。まだ40歳。プロ野球12球団で最も若い指揮官に今、大きな注目が集まっている。しかも率いるのは歴史の深い人気球団だ。当然、相当な重圧もあるだろう。10月27日に行われた就任会見で高橋監督は「大変重たいというか、責任ある役割になる。今まで先輩が作り上げてきた伝統を守りつつ、自分らしさも出していきたい。不安はあるけれども覚悟を持ってまい進していきたい」。力強い口調ながらも、その所信表明において「重たい」「不安」という語句を用いて胸の内にある緊張感を吐露した。
原辰徳前監督の退任会見が行われた翌日の20日に球団から監督就任の正式要請を受けた。それから、わずか3日後。23日に監督就任を受諾した。目まぐるしいスピードで実現した“Gの政権交代”だった。しかし……。これに違和感を覚えている人も多いはずだ。
言うまでもなく高橋監督は今季まで現役選手だった。正確に言えば兼任打撃コーチだが、今季は「代打の切り札」として38打数15安打の打率3割9分5厘の高い数字をマークするなどチームにとってまだまだ必要な戦力であった。慶大から1997年のドラフトで1位指名された巨人に入団し、1年目から中心選手として長く活躍。通算1819試合に出場し、1753安打、321本塁打、986打点、打率2割9分1厘。これまでの輝かしい経歴を振り返ってみても「巨人のプリンス」と呼ばれるにふさわしい人材だ。そんな大功労者が引退試合も行わず、18年の現役生活にピリオドを打った。
20日に監督就任要請を受けた際に高橋が「まだまだできるという思いはあるので、戸惑いはある」と現役への強いこだわりも見せていたことを考えれば、球団から半ば強制的に現役引退の道を選択させられてしまったような印象はどうしても拭(ぬぐ)えない。しかもこの20日の監督就任要請が水面下で行われずにメディアに対して囲み取材の場が設けられ、オープンにされたことも逆に「球団の計算があったのでは」とついつい深読みしてしまう。「巨人が高橋由伸に次期球団監督就任要請!」と新聞、テレビ、ネットなどで大々的に報道されれば、どうしても要請された側は断りづらくなるからである。しかも高橋は外部の人間ならばいざ知らず、巨人の所属選手だ。そう簡単に「NO」と言えるわけがない。
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