都営交通から全国へ広めたい“ヘルプマーク”に足りないこと:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/5 ページ)
東京都交通局が配布する“ヘルプマーク”の重要性が高まりそうだ。優先席の携帯電話使用が解禁されたからだ。内臓疾患など、外観では分からない不自由な人を示す“ヘルプマーク”は良いアイデアだ。全国の公共交通機関が採用すべきである。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP。
外観では分からない「不自由な人」
夕方。秋葉原駅のコンコースの中央で、白杖をついた青年がウロウロしていた。その時間の人の流れに竿を差すような場所だ。白杖のおかげで、彼は目が不自由だと分かる。通り過ぎる人々は彼に当たらないように流れを変えている。“スマホ歩き”の人がぶつかりそうになり、お辞儀をして向きを変えた。お辞儀は彼には見えないし、きっと何があったかも分からない。でも、思わずお辞儀をするというだけでも救いはある。スマホ歩きは良くないけれど、悪い人ばかりではない。
それはともかく、私は白杖の彼に話しかけた。
「どうしたんだい、道が分からないか?」
「トイレに行きたくて、この近くだと思うんですけど」
「ああそうか、トイレか。どこだっけ」
見渡すと、少し離れたところにあった。私は彼に腕をつかませて連れていった。
「ありがとう、あとは一人で大丈夫」
「まあ、ここから先は手伝いたくもないけどな」
互いに笑って別れた。こんなとき「気にすんな、オレもトイレに行きたいと思ってた」と気の利いたことを言えれば、言葉を扱う職業として、もっと出世したかもしれない。だけどたいていは事後、数分経ってから気付く。そして同じ場面はなかなか来ない。
白杖を持った人、車いすの人、妊婦、ベビーカー、重い荷物を持った人を見かければ、しばらく目で追って、困っていそうなら助ける。なぜか。それは善意の問題と言うより「一目で分かるから」だ。一方で、外観では分からないけれど、思いやり、見守りが必要で、助けがあったほうがいい人もいる。
そんな人はどうしたらいいか。「助けて」と書いたプレートを付ければ分かりやすい。勇気を出して「私は○○○なので手伝ってください」と声を上げてもいい。しかし、当人は恥ずかしいだろうし、何よりも無粋である。
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