都営交通から全国へ広めたい“ヘルプマーク”に足りないこと:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)
東京都交通局が配布する“ヘルプマーク”の重要性が高まりそうだ。優先席の携帯電話使用が解禁されたからだ。内臓疾患など、外観では分からない不自由な人を示す“ヘルプマーク”は良いアイデアだ。全国の公共交通機関が採用すべきである。
携帯電話解禁で“ヘルプマーク”に注目
妊産婦については2006年に厚生労働省が“マタニティマーク”を設定した。ときどき詐称や濫用などの話題も聞こえるけれど、特別な思いやりの対象と認知できる。何か積極的に手助けをする機会はないとしても、それでいいのだ。道路交通法で定められた初心者運転標識や、高齢運転者標識のようなもの。周囲に気づきを与えるだけでいいし、何かあったときに対処の手立てを考えられる。
しかし、妊産婦や白杖、車いすを持たなくても、不自由な人はいる。内臓を患っている人や人工関節の利用者などだ。そんな人々のために、東京都は2012年10月に“ヘルプマーク”を制定した。当初は都営地下鉄大江戸線の優先席にステッカーを掲示し、駅で配布した。配布版のヘルプマークは小さな札で、鞄などに取り付けるようだ。2013年7月からすべての都営交通事業で掲示、配布しているという。
しかし私はヘルプマークを知らなかった。都営地下鉄に乗っても優先席には近寄らないし、駅の掲示物も気にとめない。電車の中で所有者を見かけない。いや、いたかもしれないけれど、もともと人さまの荷物を注視したりしない。洒落たデザインの鞄をチラリと眺める程度。ジロジロ見て、置き引きやひったくりと間違われては不本意だ。
私がヘルプマークを知ったきっかけは、人工関節利用者の友人が持っていたから。そして、JBPRESSの記事「この秋、優先席に押し寄せ始めた携帯ユーザーへお願い ヘルプマークを見つけたら席を譲る勇気を」を拝読したからだ。
JR東日本、関東大手私鉄を含む東日本の鉄道会社37社は、10月1日から携帯電話マナーの方針を変更した。従来は「優先席では電源OFF」だった。現在は「優先席では混雑時に電源OFF」となった。関西のJR西日本と24の鉄道会社は2014年7月から携帯電話OFFの呼び掛けをしなくなった。携帯電話の電波障害に関する長年の誤解が解けたわけで、これはこれで良かった。しかし前掲の記事のように「今まで携帯電話が使えないから優先席を敬遠していた人々が、優先席にやってくる」という恐れもあるという。
優先席には優先される人がいるから、対象外の人は遠慮する。それが優先席の趣旨だと思う。しかし、そういう気持ちとは関係なく、「優先席=携帯電話禁止」が対象者を保護する役割を担っていた。この考え方に違和感はあるけれど、事実、私が優先席に近寄らない理由も携帯電話が使えないからだと思い当たる。前掲の記事は、携帯電話禁止に代わる保護機能として、ヘルプマークの認知度を高めたいという。この趣旨に賛同する。
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