マツダはRX-VISIONをビジネスにどう生かすのか?:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/3 ページ)
今回の東京モーターショーで注目を集めた1台が、マツダのコンセプトスポーツカー「Mazda RX-VISION」だ。この発表に込められたマツダの強い思いとは――。
ロータリー復活の象徴
では、今回発表されたRX-VISIONは次期RX-7なのだろうか? 筆者のみならず、多くのジャーナリストがマツダの関係者にそれを問い質したはずである。その答えは残念ながら「NO」である。このコンセプトカーはまだまだ生産を前提としたモデルではない。あくまでもコンセプトカーであり、具体的な生産計画は全くない。
マツダがこのコンセプトカーで何をやろうとしているかを理解するためには、そもそもロータリーエンジンの生産が何故途絶えているのかから考える必要がある。ロータリーエンジンの最大の問題点は排気ガスだ。それは昨今話題になったNOx(窒素酸化物)ではなく、CO(一酸化炭素)とHC(炭化水素)である。年々厳しくなる排気ガス規制を考えれば、これを解決しない限りロータリーの復活は難しい。ましてやこれまでRX-7の販売を支えてきたのは北米市場。世界一厳しい規制を持つマーケットである。
筆者の素人考えでは、近年マツダが得意としているディーゼルの技術を応用するのではないかと思っている。ノンスロットル化し、直噴インジェクションとEGR、過給という組み合わせによって、ロータリーが仕組み上背負っている混合気の吹き抜けを減らすことが第一歩だろう。それだけでは不十分ということになれば、排気ポートに電子制御バルブを付けて徹底的にコントロールするしかない。
普段、尋ねれば大抵の質問には答えてくれるマツダのエンジニアも、ことロータリーとなるとなかなか口が重い。それでも聞き出したのは、ロータリーの長所を伸ばす改良を加えていけば出口はあるということだけだった。いずれにしても次世代ロータリーエンジンはまだまだ開発途中にあって、すぐに生産モデルに移行できる状態ではない。冒頭に記した2017年復活説に対しては、マツダの誰に聞いても判で押したように「無理だ」と答えが返ってくる。それでは、今回のRX-VISIONはマツダのビジネスにとってどういう意味があるというのだろうか。
いくらマツダがその主義として顧客との信義を重んじるとしても、企業である以上、ビジネスにならないことはできない。プロジェクトを推進するためには、ステークホルダーが採算を見込むように状況を整えなくてはならない。
マツダはそのために、長年ファンが期待しているロータリー復活を象徴的に表すコンセプトモデルを用意したのである。市場の反応が好感触であれば、プロジェクトがスタートできるというわけだ。
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