決戦兵器「エヴァンゲリオン」は山陽新幹線を救えるか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/5 ページ)
11月7日、山陽新幹線に独特な仕様の電車が現れた。かつて東京駅にも発着していた500系電車が、アニメ作品「新世紀エヴァンゲリオン」の主要メカをモチーフに塗装された。このコラボレーションは山陽新幹線にとって大きな意味がある。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP。
期間限定で作られた「聖地」
2015年の「ユーキャン新語・流行語大賞」に、「爆買い」「インバウンド」がノミネートされている。爆買いは外国人の富裕層旅行者による商品買いあさり現象を指し、インバウンドは海外旅行者の日本国内観光を指す。しかし、旅行部門ではもう1つ、重要なキーワードがある。「聖地巡礼」だ。これは一度も候補になっていないようだ。
聖地巡礼は本来、宗教の根拠地を訪れる敬虔な行為を示す言葉だ。しかし流行語としては、「ドラマのロケ地、アニメの題材となった土地」を訪問する旅行を示す。例えば、北海道の富良野は倉本聰脚本のドラマ「北の国から」の聖地であるし、埼玉県の鷲宮神社はアニメ「らき☆すた」の聖地だ。鷲宮神社はアニメにおける聖地巡礼ブームのきっかけとされている。
2015年11月7日。ちょっと変わった「聖地」が誕生した。山陽新幹線で、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」とコラボレーションした電車「500 TYPE EVA」が走り始めた。聖地というより、聖路線、あるいは聖列車と言うべきだろうか。いずれにしても、新世紀エヴァンゲリオンのファンにとっては気になる列車だ。巡礼の対象だろう。
しかし、新世紀エヴァンゲリオンの舞台は、近未来の箱根に作られた「第3東京市」である。劇場版では北九州モノレールにそっくりな車両が出てきた気がするけれど、地域として西日本は作品中に登場しない。山陽新幹線も出てこない。つまり、500 TYPE EVAは、アニメ作品とは関係ない場所を走る。ちょっと変わった聖地となっている。
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