決戦兵器「エヴァンゲリオン」は山陽新幹線を救えるか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)
11月7日、山陽新幹線に独特な仕様の電車が現れた。かつて東京駅にも発着していた500系電車が、アニメ作品「新世紀エヴァンゲリオン」の主要メカをモチーフに塗装された。このコラボレーションは山陽新幹線にとって大きな意味がある。
アニメファンを喜ばせた「2015年の大事件」
山陽新幹線は1972年に新大阪〜岡山間で開業した。博多までの全線開業は1975年だ。一方、新世紀エヴァンゲリオンのテレビ放映開始は1995年10月から始まり、1996年3月に最終回を迎えた。2015年は山陽新幹線の全線開業40周年、新世紀新世紀エヴァンゲリオンの放送開始20周年である。その両方を記念して「山陽新幹線・エヴァンゲリオンプロジェクト」が企画された。
そのメインコンテンツが「500 TYPE EVA PROJECT」だ。鋭角的なデザインで人気の500系新幹線を素材とし、塗装と内装を変更して500 TYPE EVAと名付けた。塗装は通常の500系の塗り分けをベースとし、アニメに登場する人型ロボット(決戦兵器)「エヴァンゲリオン初号機」に使われた色を追加した。ポスターには500系電車の正面とエヴァンゲリオン初号機の顔が並んだ。電車のヘッドライトとロボットの眼の色と位置に注目すると、確かによく似た雰囲気である。鉄道ファンもアニメファンも思わずニヤリとする仕掛けになっている。
車内はもっと手が込んでいる。現在、500系電車は8両編成で山陽新幹線の各駅停車「こだま」に使われている。そのうちの1両は展示車とし、アニメと鉄道がコラボレーションしたジオラマなどが設置されている。メインコンテンツはロボットのコクピットだ。座席と映像装置を組み合わせて、ロボットの操縦を疑似体験できる。アニメに登場する謎の敵「使徒」と戦うというコンテンツが用意されている。
コラボレーションの概略をざっと説明すると、上記の通りだ。なにしろ新世紀エヴァンゲリオンは1990年代を代表するアニメ作品だ。詳しく説明するとキリがない。とはいえ、アニメ作品はターゲットとなる世代を外れると認知度が下がる。そこで新世紀エヴァンゲリオンの社会的影響をもう少し紹介しよう。
1970年代の「宇宙戦艦ヤマト」、1980年代の「機動戦士ガンダム」、それと同じかそれ以上の影響力を1990年代の新世紀エヴァンゲリオンは持っていた。第1回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で優秀賞を獲得するなど、受賞作品は文化芸術面で高く評価され、最高視聴率は10.3パーセント、平均視聴率は7.1パーセント。劇場版は5作以上も作られて、それぞれがDVD/Blu-ray版として大きく売り上げている。リメイク版の「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」は全4部作で、現在3作目まで公開され、興行収入は合計で110億円を超えた。そして完結編の第4作をファンは心から待ち望んでいる。しかし公開日は未定となっている。
実は、新世紀エヴァンゲリオンの時代設定は、1995年当時の近未来。2015年だった。つまり今年だ。この作品のファンたちは、2015年にアニメ制作関係者が何かを仕掛けてくれると期待していた。500 TYPE EVAは、その期待に応えるプレゼントともいえる。
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