NTTコムウェアが導入した「タレントマネジメント」という“武器”:新たな人事戦略(3/4 ページ)
日本企業のグローバル化が加速する中で、新たな課題が浮き彫りになってきた。従来型の人材管理では対応することが難しく、各社は対応に追われている。このような状況の中で、NTTコムウェアは新たなシステムを導入した。それは……。
導入初期に必要なのは強力なトップダウン
実力を適正に評価し、各社員に適切な役割を与えるタレントマネジメント。しかし、このシステムは必ずしも万能ではない。河本氏は実際にシステムを活用してみて、導入の初期には大きく2つの課題が見えたと言う。
「1つは『評価基準の定義付け』。タレントマネジメントを運用するには、スキルや数値化の難しい行動特性を、誰でも公正に評価できるよう定義付けをしなければなりません。システム内にもプリセットされた定義がありますが、あくまで目安でしかないので、自社の業態や風土に合わせてカスタマイズする必要があります。幸い当社では、これまで運用してきた『コムCP』での指標をある程度引き継ぐことで混乱は避けられましたが、ゼロベースで可視化できる評価基準を作るのはかなりの時間を要するでしょう。定義付けの議論をしているうちに『定義付けすること』自体が目的化ししまって、本来の目的を見失ってしまうケースもあるので、注意が必要です。
そして、もう1つは『社員の自己申告の促進』です。いくら運用側が綿密な評価定義をしても、現場の社員たちがデータを入力してくれなければ徒労に終わってしまいます。この点に関しては、社員が積極的に入力してくれるようなモチベーションをいかに担保するか、運用側が考えていかなければなりませんね」
河本氏はこれらの課題についての対策として、「導入初期には強力なトップダウンがポイントになる」と分析する。
「タレントマネジメントの評価定義は、経営戦略や事業計画に基づいた判断が要求されます。納得性が高い定義を作るのは大事ですが、そこには唯一絶対の正解も存在しないので、議論しようとすればいくらでも時間をかけられてしまう。上に立つ人間がある程度リードして推し進めていくほうが、スムーズにシステムを導入できると思います。ただし、時代の移り変わりに合わせて求められる能力や行動特性も変化するので、定義の見直しは随時検討していくべきですね。
社員による自己申告の促進についても、社内文化として根付かせるまでは、トップダウンでの現場指導が不可欠でしょう。その一方で、システムに基づいたキャリアアップ支援を行うなど自己申告するメリットを明示して、社員の自発性を高める工夫も重要です」
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