世界は“報復”するのか? 「13日の金曜日」に虎の尾を踏んだイスラム国:世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)
「フランス史上最悪」と言われる同時多発テロが発生した。テロが襲った11月13日の金曜日は「歴史的な転換点になる可能性」があり、フランスのオランド大統領はイスラム国への“報復”を断言した。今後の世界情報は……?
世界はやっと目を覚ますことに
最近日本でも、安倍政権による安保法制をめぐって集団的自衛隊が大きな話題になった。言うまでもないが、米同時多発テロや今回のテロを見れば、戦争行為とは敵国からの軍事攻撃とは違う非国家主体によるテロ攻撃も含まれる。例えば米国で今、テロ組織による米軍を狙った大規模なテロが発生すれば、日本は知らん顔をできないだろう。見方によれば日本の存立にもかかわる。今回のフランスとNATOの動向は、日本も注目しておいたほうがいい。
ここまでイスラム国の問題が大きくなったのには、世界がイスラム国に対する確固とした対応を示してこなかったからに他ならない。ただ今回のテロ直前には、イスラム国にとって打撃となるようなニュースがいくつか続いていた。
まず欧米人や日本人を斬首した「ジハーディ・ジョン」こと、モハメド・エムワジがシリア北部ラッカで米英の何カ月にもわたる監視活動の末に無人戦闘機で殺害されたと報じられた。またそれに続いて、イスラム国の支配していたイラク北部の要衝シンジャルがクルド部隊に奪還されたとのニュースが流れた。そしてオバマ大統領も、記者会見で対イスラム国の作戦は効果が出ているとテロの前日に語ったばかりだった。
だが大規模テロは起きた。今回のテロで見えた現実は、これまでの空爆ではイスラム国との戦いとして、まるで不十分だったということだろう。フランスの市街地で発生した大規模テロで、世界はやっと目を覚ますことになりそうだ。
筆者プロフィール:
山田敏弘
ノンフィクション作家・ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト研究員を経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』『』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。
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