マニュアルを覚えてはいけない? 知られざる「航空整備士」のヒミツ:水曜インタビュー劇場(整備士公演)(3/7 ページ)
空港には飛行機の整備士がたくさんいるが、彼らはどんな仕事をしているのだろうか。JALの整備士に話を聞いたところ、それはそれはたくさんあって……。
整備士の勘で判断してはいけない
小久保: 整備士というと、どこかを修理するといったイメージがあるかもしれませんが、それはトラブルが生じたときだけ。トラブルがない状態であれば、主に点検だけなんです。飛行機は何かにぶつかっていないか。それによってダメージはないか。あとは、燃料。燃料を搭載するのは別の担当者が行うのですが、その量が正しいかどうかを確認しなければいけません。
また、機内も点検しなければいけません。例えば、座席が汚れていれば、シートを替えなければいけません。イヤフォンが故障していれば、原因を見つけてきちんと聞こえるようにしなければいけません。Wi-Fiに不具合があれば、それを修理しなければいけません。
土肥: た、たくさんあるじゃないですか。まず、機体の話から聞かせてください。何かにぶつかって……というのは?
小久保: 鳥がぶつかってくるんですよね……いわゆる“バードストライク”。ただ、ダメージを受ける場所ってだいたい決まっているんですよ。基本的には風が強く当たる部分で、特に多いのは、エンジン、翼、ノーズ(先端部分)。また、着陸のときにランディングギア(着陸装置)を出しますが、その足の部分やタイヤに当たることも多いですね。
ダメージを受けやすい部分は決まっているので、その部分を中心に点検していきます。
土肥: ダメージがあることを発見したら、どうするのですか?
小久保: その飛行機は「次の便に飛べるのか、飛べないのか」その判断をしなければいけません。飛べるのであれば、その根拠が必要になるんですよね。飛行機というのは人間の目で見て、「これは凹んでいないから大丈夫」とか「このくらいの凹みであれば大丈夫」といった決断をしてはいけません。すべてマニュアルで決まっているんですよ。
マニュアルをつくるのは航空機メーカーさんで、そのマニュアルに従って私たちは整備しなければいけません。ですから、私たちはマニュアルで定められたこと以外はできないんです。「このくらいの凹みであれば大丈夫」といった具合に、自分の判断でやってしまうと、飛行機の品質が保障されません。なのでマニュアルを読んで、それに応じて整備していかなければいけません。その結果、異常がなければ「飛んでいいですよ」といった世界ですね。
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