自動車関連税制の論理性は見直すべき:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/3 ページ)
海外諸国に比べても割高な日本の自動車関連税に、さらに新たな税が加わるかもしれない。もはや法律の改悪でしかない。今回はその制度の歪みについて考えてみたい。
理想的な税制とは何か?
まずエコへのインセンティブにもっと合理的なシステムを構築すべきだろう。例えば、新型のプリウスはガソリン1リッターあたりカタログ燃費で40キロ走る。素晴らしい性能だが、ではこれをタクシーとして使っている場合はどうだろう。国土交通省によれば、タクシーの年間平均走行距離は6万キロである。自家用車の6倍に達するわけだ。環境に対するリアルな負荷は自家用で使うプリウスの6倍だから、環境負荷に応じた負担にするためには燃費は6分の1でなくてはならないことになる。本来環境に対して掛ける負荷は、1リッターあたりの走行距離、つまりカタログ燃費とは関係性が薄く、実走行での燃料の消費総量に紐づくのである。考えてみれば当たり前の話だ。
仮に、リッターあたり2キロしか走らない大昔のアメ車を趣味でガレージに飾っている人がいたとしても、1年間で一度もエンジンを掛けなかったとすれば環境負荷はゼロだ。これに環境課税する論拠はない。
こうした点から考えれば、エコのインセンティブは燃料に炭素税を掛けることで図るのが最も合理的だと思われる。しかしその前には揮発油税と消費税の二重課税など、あっちこっちにある矛盾を全て解決すべきである。日本の基幹産業である自動車産業を強くするためにも、消費者が意味不明の税を押し付けられないためにも、税に対するグランドデザインをゼロベースで組み替え直すべきタイミングなのではないか。
そうした問題を放置したまま、さらに問題を複雑にする税制改正には強く反対を唱えたい。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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