環境保護活動とビジネスは共存できる――パタゴニアの辻井隆行支社長(4/6 ページ)
アイディール・リーダーズの永井恒男Founderが、優れた決断がビジネスを成功に導いているケースを聞くシリーズ。第3回目はアウトドアブランド「パタゴニア」の辻井隆行支社長に話を聞いた。
ビジネスを使って日本の環境問題を解決していく
辻井: でも、この考え方って日本人の「もったいない精神」とか「思いやり/おもてなしの心」と本来相性が良いはずなんですよね。
永井: 確かにおっしゃるとおりですね。
辻井: パタゴニアのミッション・ステートメントにも「ビジネスを使って環境問題を解決していく」と謳(うた)っています。アクティビストに自分たちがなっていこうと。もちろん活動した結果、失敗もあるだろうと。でも、何もしないまま環境が壊れていくよりも、働きかけて、たとえ失敗しても別の方法を探ることを繰り返すほうがずっと良い。
永井: 会社としてそれを奨励する福利厚生面での仕組みはありますか?
辻井: あります。「環境インターシップ」という制度がそれです。社員が、環境問題に取り組む団体に最長2カ月間/年、有給でボランディアとして参加できる仕組みです。
永井: 会社案内には「そして還らず」というコピーもありますね! そのままそちらの活動がメインになっちゃう人もいるんですね。
辻井: でも、そうやって紹介しているように、それは「良かったね」と受け止めているんです。パタゴニアっていう会社は創設者イヴォン・シュナイナードにとっては「手段」だということの表れでもあります。途切れなく支援するために、1年を通じてチームとして活動に参加する部門もありますね。
永井: 僕も辻井さんの影響で、Tシャツを捨てなくなった1人ですけれど(笑)、でもアイディール・リーダーズでも社会課題の解決に取り組んでいるのは、結局それがビジネスとも直結しているからなんですよね。
辻井: 僕も日本支社長になってしばらくは、どうやってそれを結びつけるのか試行錯誤の連続でした。実際、就任直後は売り上げが落ちてしまったんです。で、売り上げを構成する要素を因数分解して、購買行動はお客さまの投票なんだっていう本質に行き着いて、本社のトップダウンと全社員からのボトムアップで生まれてくるフィードバックを融合させてビジネスプランを立てる仕組みを整備していって、そのプランを実行する能力をつけてもらうためにそれまでなかった人事部を作り――ということを行ってきました。
永井: 自ら作ったプランにコミットする人材・組織開発を進めてきた、というわけですね。
辻井: はい。そこに至るまで7年かかりました。ようやく、日本の市場環境で持続的に成長できる体制の土台が整ったように感じています。イヴォンも僕を責めることなくよく待ってくれたと思います(笑)。彼は、日本の社会問題の解決、それをビジネスを通じて実行する経営者はやはり日本人であるべきだ、と考えていたようで、ずっと待っていたようなんですね。だから、そろそろ日本支社が環境問題を解決する具体的な成果をあげなければならないと強く感じています。その1つとして、いま、私たちが力を入れているのが、長崎県の石木ダム問題です。
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