環境保護活動とビジネスは共存できる――パタゴニアの辻井隆行支社長(5/6 ページ)
アイディール・リーダーズの永井恒男Founderが、優れた決断がビジネスを成功に導いているケースを聞くシリーズ。第3回目はアウトドアブランド「パタゴニア」の辻井隆行支社長に話を聞いた。
長崎県は既に「ほとんどの河川改修は終わっている」ことを県は認めています。それでも100年に1度の洪水に備えるため、そして、水不足対策として石木ダムの必要性を佐世保市は強調しているのです。しかし、その肝心の需要予測がかなり無理があるものであると言わざるを得ません。
この赤いグラフが佐世保市が主張する水需要の予測ですが、既に平成26年(2014年)の実績値からも大きく乖離しています。人口減少が進んでいることにくわえ、節水設備が整ったことで、ダムの必要性の根拠となる水不足対策についても根拠が失われているのです。
僕にとっては、イヴォンの「アクティビスト」であろう、という理念を、会社全体として行動に落し込んだ初めての取り組みです。
永井: 日本語で「活動家」というとネガティブに受け止められることもありますが、もっとモデレートされたものなんですよね。
辻井: そうですね。そもそも、言葉だけではなく、実際にアクションを起こす人を「アクティビスト」と呼ぶわけですから(笑)。それは寄付であっても良いし、署名であっても良いし、それぞれの立場でできること全てを含みます。ただ、先ほどの例にも挙げたように、パタゴニアもさまざまな資金援助は行ってきましたが、なかなか具体的な成果にはつながってきませんでした。企業がより主体的に社会問題の解決にあたらなければならない。アクティビストであれ、と社員に呼びかけているのはその経験があってこそですね。半年前に、石木ダムの問題を多くの方々に知っていただきたいと思い、日本支社初となる新聞広告を出したんです。本社には事前承諾を得なかったんですが、ボードメンバーの1人からは「よくやった! 日本に支社を作ってホントに良かった」という趣旨のメールをもらいました。
61人が故郷を失うことを良しとするのか?水は本当に必要なのか? 水資源の確保を言うならば、例えばダムではなく水道設備の充実に投資するという選択肢はないのか、そういったあらゆる選択肢を議論した上で、進めるべきだと思うんですよね。
永井: ダムによって利益を得る人もいるなか、日本の各地で起こっている難しい問題ですね。
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